【07】 ページ24
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彼女が人ではないかもしれない。
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なんとなくそう思ったのは、去年のちょうど今頃。
酔っ払った頭で家路をたどっているとき、ふとAちゃんのことを思い出した。
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あの時はただ彼女に会えるのが嬉しくて、何も考えてなかったけど。
今思えば四年間あそこに通っていたのに、彼女は一向に歳をとらなかった。
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ずっとハタチのまま。あどけない少女のまま。
それでも歳を重ねる度に、体は弱っていく。最初は病気なのかもしれないと危惧したけど
チヨさんの和やかな微笑みを見る限りそうではないと踏んだ。
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じゃあ彼女はなんなのか。わからなかったけど、今日、ここに来てようやく答えが出た。
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智「君は。ーーーー…Aちゃんは、」
「……」
智「樹木、だろう」
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正解、と言わんばかりに目の前のこの町一番大きい樹木がふわぁぁと葉を散らす。
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チヨさんのお家をまるで見守るように真隣にある、大きな樹木。
彼女の正体は、恐らくそうだ。
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そうなると全ての発言が意味を成す。
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ーーーー…『町の皆さんを見守っております！』
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チヨさんの農家をお手伝いしているのがお仕事。
台風の後は手が痛い。チヨさんが台風になるといつもAちゃんを心配していた。
今も。左手が痛い、と言っていた。目の前の樹木の左側を見ると風の影響か一本、枝が折れている。
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樹木にも寿命がある。
チヨさんのお家に来る度に、樹木は葉をあまりつけなくなっていたし、幹がシワシワになっていたのも知ってた。
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「樹木でもこの町一番なんですよ」
智「こんなに可愛いのにね」
「だからこの町の神様みたいなものです。だから可愛くできるんですよー！」
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秋色のカーディガン。
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「ずっとこの町を見守って来ました。たまには人の姿になって皆さんと話したり」
智「……」
「私に名前をくれたのはチヨさんです。チヨさんはいつも私のお世話をしてくれてました。チヨさんだけは私の正体を知ってました」
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ちらり、とチヨさんの家を見る。
窓の隙間から笑点のテーマが賑やかに流れ込んで来た。
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