そのヒーロー妊婦につき…３ (ページ46)

今日:15 hit、昨日:0 hit、合計:70,714 hit

１３４ページ46

　
　
「残念ながら…」

申し訳なさそうな顔をした医師にそれを言われたのは

気が付いて暫くしてからだった

巡視で来ていた看護師さんが医師を呼んでくれて開口一番に言われてのがこの言葉で

信じたくなくてその後にも何かを言っていたけど話が入ってこなかった

医師が病室から出て行った後頭が考えること拒否してるみたいで本当に何も考えられなくて
ただボーっと天井を見上げているしかできなかった

天井は夕日でだんだんとオレンジ色に染まっていく

それは一瞬綺麗に見えたけど
あの時に服を染めていった赤い物を思い出して慌てて目を逸らす

だんだんとオレンジ色だった天井は黒くなっていって蛍光灯の明かりが天井を白く塗り直していった

「A…？」

コンコンと控えめなノック音が聞こえてきてそのすぐ後に睡の申し訳なさそうな声が聞こえてくる

「目覚めたんだね… 良かった」

扉が開いて病室に入って来た睡は私の顔を見て安心したような笑顔でそう言った
　睡の目は悲しそうに細められてて見ていて私は胸が苦しくなってくる

「睡… おはよ」

体が痛まない程度に起き上がって睡に声を掛ける

思った以上に普段通りの声を出せたことに内心ホッとした

「A… あの時の女、元旦那の浮気相手だったて
捕まって警察署で色々話してたってさ

計画的犯行ってことで逮捕

暫くは刑務所で過ごして執行猶予が付くらしいの」

ベット横に扉の隣に置かれていた丸椅子を持って来てそれに座った睡は真剣な顔で話してくれた

「…やっぱり

そんなこと言ってたもんねあの女の人…
ほんっとろくなことないなー」

小さくぽつりと呟いた言葉は直ぐに消えて行って
点滴の繋がれている手を睡は優しく握ってくれた

「泣いていいのよ」

静かにそう言ってくれた睡は涙を流していた…
それを見たら私も涙が込み上げてくる

「睡… 私…！！」

そこから私たちは声を殺して泣いた

暫く泣き続けてその中で

　『守ってあげられなかった』

そのことを口に出して何とか受け入れることができた