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やっとぬいぐるみがスマホを持って来てくれたから急いで受け取って画面を見ないで操作する
手に持ってスマホは大きさから私用の物…
チラチラと手元を確認しながら操作してトークアプリから適当に人を選んで通話ボタンを押す
画面を見てないから誰に掛けてるか分からないけど トーク履歴から職場の誰かなのは確実
急いでスピーカーモードのボタンをタップして相手の女性からは見えないように後ろ手に隠す
呼び出し中の軽快な音楽が小さく流れて聞こえてくるけど 女性の叫び声で相手には聞こえてないだろう
『A〜 電話なんてどうしたの？
何か困りごと？』
微かに聞こえてた呼び出し音が切れて 睡の大きくて明るい声が聞こえてくる
睡の声の大きさに少し驚いたけど、相手の女性には聞こえてないみたいで安心する
カカカ カーンカーンカーン カカカ カカカ カーンカーンカーン カカカ
私は声を出さずに スマホの背面を爪先で叩いて〈ＳＯＳ〉のモールス信号を伝える
多分、女性の叫び声は睡に聞こえてるだろうからそれだけでも察してくれるだろうけど
緊急だって伝われば、誰か助けを回してもらえるようにのダメ押しのモールス信号だ
案の定、電話の奥で慌ただしく叫ぶ聞きなれた人たちの声が聞こえる
授業中の時間なのにごめんなさい なんて思いながら 『すぐに向かうから！』 って聞こえて来た睡の声にひどく安心してしまう
だけど油断はできない…
女性はぬいぐるみの壁を崩して玄関からリビングに入ってきたから
勝利を確信したような 下卑た笑顔を浮かべてゆっくりと上半身を左右に揺らしながら近づいて来る姿はさながら洋画ホラーのクリーチャーだ…
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作者名：さくや | 作成日時：2021年8月24日 7時
