再会、そして動き出す 3 (ページ24)

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95 Ninomiya side ＊10/4 ページ24

ここ数日、山本の様子がおかしい。

なんとなくそう感じていた。

俺から一歩引いてるわけではない。

むしろその逆。

やけに前のめりで、積極的で。

俺と距離を縮めようとしてくれてるのは嬉しいことだけど。

なんか普通じゃない。

何かに追われてるような、何かから必死に逃げてるような、そんな感じで。

何かあったのかな、って不安になる。

俺が無意識に山本のこと急かしてるんじゃないか、とまで思う。

でも、正直俺には、そんな気持ちは全くなくて。

櫻井くんのことそんなすぐに好きじゃなくなるのは無理だろうって分かってる。

だから、ゆっくり段々と俺のことを好きになってくれればそれでいい。

そんな風に、悪く言えば余裕ぶっこいてた俺の心を乱す出来事が起きた。

授業の空き時間、暇だった俺は中庭の日陰のベンチでゲームをしていた。

風が気持ちよくて快適に過ごしてた俺の耳に、誰かが「あ、」と言ったのが聞こえた。

普段だったらそんな声全く気にしないのに、今日はなんとなく、ほんとになんとなく、声がした方に視線を向けた。

すると、どこか見覚えのある人と目が合った。

どうやらさっきの声の持ち主はその人のようで。

俺と目が合った瞬間、「しまった」って顔をしたその人は、少し考えるような素振りを見せた後、こっちに向かってきた。

なんだなんだ。

めんどくさくなりそうだな。

ふぅと息をついて、ゲーム機をカバンにしまった。