56 Sho side ＊9/9 ページ21
離れていくAの後ろ姿を見えなくなるまで、ただじっと見つめて。
『はぁ…』
陸橋下の壁に背中をあずける。
昔から好きだった、って。
鈍感にも程があるよな…
ずっと一緒にいたのに気づかなかった。
いや…
あの頃の俺は、鈍感だったというより、そういう感情自体を知らなかったかもしれねぇな。
記憶にある「好きになった人」の中で、一番昔なのは中2だし。
…って、俺どんだけガキだったんだよ。
小学生でも恋愛くらいは知ってるだろ、普通。
ありえねー。
…でも、今も好きって言ってた。
“彼女より私なの？”
だから、彼女と比べるようなこと言ったんだ。
遥香よりA、Aより遥香。
どっちのが大事とか考えたことねぇよ…
さっき、Aがいなくなったって聞いたときは、考えるより先に体が動いてて、気づいたら走ってた。
あ…
急に飛び出してっちゃったし、遥香に謝らなきゃな…
スマホを見たら、遥香からLINEが来てて。
ーー戻ってくる？荷物置きっぱなしだけど
ーー分からないから、起きて待ってるね
そうじゃん、俺、スマホと財布以外全部置いてきたわ。
今はもう11時過ぎてる。
今から戻ったら12時くらいになっちゃうし、それまで待っててもらうのは悪すぎる。
ーーさっきはまじでごめん！
ーー自分ちのが近いからそっち帰るわ、荷物は明日取りに行く！
確か、遥香、明日は夕方から用事あるっつってたから、早めに行かねぇと。
気にしてたらしくすぐ既読がついた。
ーー分かった、お昼くらいまでに来てくれると助かる
「了解、おやすみ」という返事に、「おやすみ」だけ返ってきたのを見てスマホをポッケに閉まった。
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作者名：さくらこ | 作成日時：2016年8月26日 20時
