47 Ninomiya side ＊9/2 ページ12
山本と話せると嬉しくて楽しくて。
こんな気持ち久しぶりだなって思った。
最近は自分から誰かを好きになるってことがなかったから。
でもいくら仲良くても、例の噂もあったし、告白するのは躊躇われた。
それに、山本は本当に恋愛に興味がないみたいだった。
男子に対する態度は至って普通だし、俺に対しては女子友達と同じような感覚に見えた。
だから告白しても上手くいかない気がした。
…なら、俺のことを好きになってもらうしかない。
今までいなかった男子友達ができたなら、そのうち女子とは違う何かを感じて、好きっていう感情が芽生えるんじゃないか。
その時が告白のチャンスだ、そう思った。
行きたい大学もやりたいことも特になかった俺は、山本と同じとこにした。(本人は偶然だと思ったらしく驚いていた)
同じ大学に合格して、このまま山本のそばにいればいつかきっと。
“Aがいつもお世話になっております”
“ちょ！変なこと言わないでよっ”
“別に変なことは言ってないよ”
いつか来るその時を待っていた俺には、櫻井くんの存在は予想外だった。
櫻井くんを見る山本の顔は俺や周りの男に向けるものとは明らかに違っていて。
幼なじみだからかなってちょっと思ったけど、今日、旅行の話を聞いて確信した。
あぁ、櫻井くんのことが好きなんだ、って。
山本は恋愛に興味がないんじゃなかった。
周りの男に興味がなかったんだ。
それに気づいたら、もう止まらなかった。
好きなんでしょ、とか言って、問い詰めるようなことして。
でも告白するつもりはなかった。
なのに山本が俺にあんな話し出すから。
悔しくて。
俺は最初から勝ち目なんてなかったんだって。
そばにいない男に山本の心は向けられてたんだって。
告った後、山本が戸惑ってるのを見て「あ、やっちまったな」って思った。
あの噂を思い出して、俺も「ごめんね」って言われるのかって思ったら虚しくて。
山本の言葉を遮って俺は逃げた。
最低だよ。
失恋して傷ついてる山本に、俺の気持ちを押し付けて困らせて。
もしかしたらもう友達でいることすらできないかもしれない。
でも許して。
俺は本気で山本が好きだから。
自分でも信じられないくらい好きになってたから。
分かりきった返事を先延ばしにするくらいはいいでしょ？
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 73人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さくらこ | 作成日時：2016年8月26日 20時
