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「A〜！起きてんの？A〜！」
聴こえるのは、いつも鳴るような目覚まし時計の音ではなく、ママが私を起こしに来る声だった。
眠たいな。どう思いながら、そっと目を開ける。
『おはよう。ママ。』
「おはようA、朝ごはんできてるから、着替えたら出てきてね。」
『わかった。』
適当に相槌をうつと、ママは静かに出て行った。
出て行ったことに安堵して、上半身だけ起き上がった体をベッドに戻そうとするものの、そんなことしたらママに怒られそうだ。
怠い。めんどくさい。そんな気持ちでいっぱいだが、そのせいで怒られて嫌われるのはごめんだ。
クローゼットから高校の制服を取り出す。
今日は高校の入学式。
生徒は全員制服で登校するようにと、事前に学校のホームページで言われている。
まだあたらしく、すこし冷たいシャツに着替えてブレザーを羽織る。
お世辞にも長いとは言えないスカートから見える脚を隠すために、タイツを履く。
姉が言っていたが、これは逆にご褒美…？というやつなのだろうか。
朝ごはんができてるらしいので、ぺたぺたという音を鳴らしながらリビングへ向かう。
うちは「朝はパン派」なので、いつも通り、机にはジャムやバターが置かれていた。
『ママ〜目玉焼き焼いてよ〜』
「はいはい。」
ちなみに、私が最近ハマっているのは、言わば「ジブリ飯」というものだ。
パンと目玉焼きの相性は抜群だから、まぁまぁなご馳走かな。
『ご馳走様でした』
「はい。お粗末様でした。」
その会話をすれば、持ってきていた鞄の中身をチェックする。
入学式だから持ち物は全く無いといっても過言ではないが、筆記用具やファイルはいるのだろう。
忘れ物をして、初日の印象が悪くなったら大変だ。
人は印象が９割、話し方が９割、聞き方が９割。
そのようなものに過剰な反応を見せてしまう私からすれば、全てを大切にしていかないといけない。
怒られるのは、絶対に嫌だから。
まぁ、９割ばかりに目が付くということは、残りの１割には見向きもしないということだ。
全てを大切に、ということはないのかもしれない。
うだうだ考えていれば、集合時間の３０分前となっていた。
距離的に間に合うか分からない。
『いってきまーす！』
急いで鞄のチャックを閉めると、乱雑にドアを開けた。
後ろから、ママが、「いってらっしゃい」という声が聞こえた。
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作者名：傷味飴 | 作者ホームページ：https://novel.prcm.jp/mine/account
作成日時：2022年4月9日 15時
