短編集【実ｼ兄者】 (ページ5)

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時は過ぎ幕末。ではなくシャークんはうす。
所謂おうちでーとだ。

ラブラブカップルな私たちはイチャイチャするわけでもなく淡々とゲームをする。これが熟練のラブラブカップルの生態である。

「しゃけ音ゲーうますぎなんでみえるの」
「音ハメみたいなノリ？」
「うへー才能感じる」

ゲームが上手い人のゲームを見るのは楽しい。いくらでも見てられる。

ゲームに集中しているシャークんの横顔は綺麗だ。ゲームに集中していなくても当然綺麗だけれども。どこをとっても綺麗すぎる造形、神様が利き手で作った…とかいうやつだろうか。しかしまあ、その神様の力作は本人の生活習慣によって目の下にくっきり隈が残っているわけだが。

ぱち、と目が合った。油断してたから咄嗟に目を逸らしてゲームの画面を見る。なんて初々しい反応なのだろうか。ゲームは依然続いている。さっきこちらを見ていたのは気のせいなのだろうか。………なわけない。

「…………いつまでこっちみてんの」
「いやみてない」
「みてるぜったいみてるばかあほしゃけ」

目線だけシャークんの方に向けるとやはりこちらを見ている。何ニタニタしているのだ。見ているではないか。
シャークんは音ゲーを極めすぎて画面を見なくてもできる意味のわからない能力を持っている。正直頭はおかしいと思う。そのリソースを勉強に割いてほしいくらいだ。

「あまり女の子をいじめてはいけないよ」
「えぇいじめてないって」
「すきあり！！」

がた、と床の揺れる音。がちゃんとコントローラーの落ちる音。私は両手の親指をシャークんの口角につっこんで押し倒した。押し倒されたシャークんはというと目を丸くしてぱちぱちと瞬きを繰り返している。

「女に敷かれる気持ちはどう？」
「………ふーん？」

「そういや歯がいいとかなんとか言ってたじゃん、噛まれてみる？」
「えっ」

親指に歯が少し食い込む。ほんのりと痛みを感じて嫌な汗をかきそうになる。鋭い歯で噛まれたらそれはもう痛いだろうが……好奇心は猫をも殺すということわざをふと思い出す。猫もこんな気持ちで肉食獣に食べられてしまったのだろうか。

「女の子には優しくしないとだめだよ？」

以下年齢制限かかったら怖い作者の保険

と言って二人は腕相撲をした。