36.気になる恋の行方 - O - ページ10
「大野さん、そろそろ帰らない？」
キッチンからカズの声が届いた。
振り向くとカズはシンクの所で両手をついて俺をギロリと睨んでいる。
「酒、もう無いよ」
「じゃあ買ってきてよ」
「なんで俺なんだよ」
「お前んちじゃねぇか」
「つか帰れって言ってんの」
「ヤダよ」
「なんで」
「Aちゃんが帰ってくるまで帰らない」
「はぁ？」
呆れている。
帰らない理由が意味不明過ぎて呆れている。
そりゃそうだ。
俺が頭ん中で考えてる事なんて誰にも分かりゃしない。
「今日相葉ちゃんとデートしてんでしょ？帰ってこなかったら心配じゃん」
「なんで大野さんが心配してんの。帰ってくるよ」
「言い切れる？相葉ちゃん、ヤル時はヤル男だけど」
「カタカナで言うんじゃないよ」
「あ、わかった？でもさ、相葉ちゃんにホテル誘われて断る女は…」
「Aは絶対ついて行かないしアイツも一発目のデートでそんな事はしない。お前と一緒にすんなよ」
「あー、傷ついた今の」
「本当の事だろ」
「カズだってAちゃんにキス迫ってたクセに」
「違う、あれは………もういいでしょ。関係ないよ大野さんに」
「関係あるよ」
「いや帰れ早く」
カウンター越しに見つめ合う…いや、睨み合った数秒後、玄関の扉が開く音がした。
俺とカズはリビングの扉が開くのをじっと待つ。
彼女の表情次第で、相葉ちゃんの恋の行方が分かる気がした。
「ただいま……あれ、大野さん、」
「どうも」
「、、、」
ぺこっとお辞儀して、
Aちゃんは逃げるように部屋へ戻ってしまった。
そういえばあの子と会うのは旅行の時以来。
そりゃ警戒されても可笑しくないよな。
「お前…何したの」
カズの切れ味抜群の鋭い視線が俺の目に向けられる
が、そう簡単に切られる俺でもない。
「さぁ…なんだろネ？」
俺の姿を見て部屋に戻ったのは間違いないが、
それにしても最初から表情が曇っていた気がする。
相葉ちゃんなら彼女が出来ても俺たちとの付き合いは変わらなさそうだから、
いっその事もう付き合っちゃえーなんて思ってたけど……もしや相葉ちゃん、撃沈か？
「あ……カズ電話鳴ってるよ」
「もうAは帰ってきたんだからお前も早く帰れよ」
「はーい」
携帯片手にベランダへ出たカズ。
言われた通り俺もそろそろ帰るとするか……
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作者名：ミト
| 作成日時：2019年11月4日 11時
