#2 一等星のカノジョ【ars K.N】 (ページ20)

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46.一等星に想いをページ20

「潤くん、さっきのお客様知り合い？」

帰り道、潤くんは「んー」と考える仕草を見せながら答えた

「知り合いというかご常連様、だな。確か先々週くらいに初めて来てくれて」
「へぇ…私は初めて見た」
「もう４，５回は来てくれてるよ。ここの紅茶とアップルパイが好きだって」
「へぇ…嬉しいな。潤くん、私は止めないからね」
「は？」
「お客様でも、好きならアタックするべき！」
「バカ、そんなんじゃねーよ」

ふん、とまた潤くんはご機嫌ナナメに

照れ隠しだったら可愛いな
人を好きになる事は、とても素敵な事なのに

………。

ふと、頭の中にカズが浮かぶ

今日は帰ったら美味しい中華を作らないとなぁ…なんて考えながら空を見上げた

旅行で見た星空には負けるけど、都会の星も捨てたもんじゃない

そう思えるのは、
私があの星に想いを馳せているからだ

「A、店の名前の意味知ってるか？」
「意味？」

隣で同じく星を見上げた潤くんは続ける

「"シリウス"ってさ、一等星の一つなんだって」
「一等星…」
「そう。冬になったらそれはそれは輝くらしいぞ」
「へぇ…全然知らなかった。それに店の名前の意味なんて考えたことないや」
「おいおい、少しは興味持て(笑)…ちなみに、シリウスは一等星の中でも一番明るいんだってさ。だからウチの店もこの街で一番の洋菓子店にならないと…って、A？聞いてる？」

一等星…

無数にある星の中で一番輝いている星。

＿＿"誰よりも強く輝いてて、目が離せなくて……すげぇ惚れてた"

あの時、カズが見つめていた星もきっと一等星で

彼女と別れた事を後悔はしていないって言っていたけど、今の私と同じようにカズは一等星に彼女への想いを馳せていたんだ

……羨ましいな。

私もいつか、カズの見つめるその先で

強く強く輝きたい