10.お眼鏡に叶った女 - Ｎ - ページ10
昨夜のAのカミングアウトには驚きを隠せなかった。
まさか仕事を辞めたなんて…
しかも実はカフェで働いてましたーなんて。
これからはカフェの方に本腰を入れていくとか。
アイツ…金銭面は大丈夫なのか？
まぁ家賃は折半だからキツくはないだろうけどさ…
・
「おはよー、ニノ」
「おはよ相葉さん」
「今日の日替わり定食は焼肉だって」
「もうチェックしてんの？確かに焼肉はアツいけど」
今日の昼飯は社食で決定だな。
「大野さん、今日の日替わり焼肉ですって」
「んー、今日はナミちゃんとランチだからパス」
涼しい顔でキーボート叩いていた大野さんはなかなかのモテ男だった。
だけど、絶対に彼女は作らない。
たぶん今まで居たことないんじゃないかな。
身体の関係はどうなのか知らないけど。
謎多き男だ。
対して。
「あのさ、Aちゃんの連絡先教えてくれない？」
相葉さんはとても分かりやすかった。
というか隠すつもりが無いのが彼のすごい所。
人柄も抜群に良いし行動力あるし仕事早いし…
こんなハツラツとした男は他に知らない。
………って、今なんつった？
「誰の連絡先って？」
「Aちゃん」
「なんで」
「イイナ、って思ったから」
「そうか。とりあえず今、仕事中な。あとでまた聞いてくれ」
連絡先くらいすぐ言えるけど、少し待て。
俺に時間をくれ。
確かにアイツはただの同居人であって彼女でもないし好意を抱いている訳でもない。
だから連絡先を隠す必要はないわけで。
でも一応プライバシーってもんがあるし、そもそもあの時自分で聞けば良かっただろって話で。
…でもまぁ、
一度は会ってるし勝手に教えても問題ないか？
相手は相葉さんだし安全だろ。
変な近づき方はしないはず。
それに彼と連絡先を交換したい女性なんて社内に何人いると思ってる？
Aは相葉さんのお眼鏡にかなった。
幸せな女だ。
「お待たせ相葉さん。これ、さっき言ってたやつ」
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作者名：ミト
| 作成日時：2019年10月26日 19時
