7.同僚の方々 ページ7
二宮さんとの同居生活は淡々としたものだった。
お互い干渉する事もないし、
晩御飯を用意しなきゃいけない訳でもない。
好きな時に好きなものを食べて、
お風呂に入って、寝て、起きて、出社して…
それの繰り返しだ。
「…あ、どうしよう」
玄関前でメールの着信が鳴ったので、一旦確認。
相手は彼氏からだった。
"今から会いに行っていい？"
申し訳ないけどそれは無理な話で、断るしかない。
変だと思ってるだろうな、私のこと。
まぁいいや、とりあえず家に入ろう。
……ん？
なんかいい匂いがする。出汁の匂い？
靴もなんだか……いつもより多い。
「カズ〜、ビールもっぽん！」
「大野さんペース早いって。これで何本目？」
二宮さんの他に違う声が……大野さん？だれ？
「あ、吹きこぼれちゃう！ニノ布巾ちょうだい！」
違う声がさらにもう一人。
一体誰と何を……
「ただいまー…」
静かにリビングの扉を開けると、何やら楽しそうな雰囲気が漂っていた
「あ、噂のAちゃん？」
「なんだよ、お前こんな可愛い子と住んでんか」
すっきりした顔立ちでつぶらな目をした人と、
柔らかい雰囲気で今にも眠りそうな小柄な男性。
二人の前には鍋がぐつぐつと踊っている。
「Aも食べる？鍋」
「あー……まず、この方たちは？」
「大野智と相葉雅紀。同僚」
「じゃあヒトミとも？」
「そ、みんな仕事仲間」
「へぇ…初めまして」
ぺこっと二人に頭を下げてとりあえず鍋を囲んだ。
大野さんという人はビールをゴクゴクと喉に流し込みながら頬を桃色に染めていて、
相葉さんという人は白菜やら肉団子を私の器によそいながら気さくに声を掛けてくれた。
「すいません勝手にお邪魔しちゃって。ニノが女の子と住んでるって言うんで遊びに来ちゃいました」
「あはは…もう、全然好きにしていただいて大丈夫ですので…」
私のプライベートは数分間のお風呂場と自分の部屋
それ以外は共有スペースだと思っているので何をしてもらっても構わない。
「カズ〜、まさかこの子と付き合うからってハルと別れたのか？」
"ハル"
大野さんの口から出た名前に私は一瞬お箸を止めてしまった。
やだな。
何を敏感になっているんだろう。
軽く聞き流せばいいのに。
「違うよ。また別の理由があって別れたの」
「だよなぁ。恋に一途なお前が他に好きな人作るわけねぇ……もん…」
「大野さん、眠たかったら俺のベッド使っていいから」
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作者名：ミト
| 作成日時：2019年10月26日 19時
