6.事実発覚 ページ6
玄関を開けて靴箱の上にキーケースを置く。
家の中は真っ暗で
まだ段ボールの匂いが漂っていた。
いつ自分の家の匂いになるんだろう。
そんな事を考えながらリビングの明かりをつけた時
「ただいまー」
同居人、帰宅。
まだ出会って２日目だからか
私の目はなかなかその姿に慣れていなくて
「おかえりなさい…です」
どうもぎこちなくなってしまう
「フフ……"です"？」
ネクタイを緩めながら近づいてくる二宮さんに心臓が鳴っている。気がした。
気のせいであれ。
「もういいよ？敬語とか。なんか距離あるし」
「距離はあった方がいいのでは…」
「ヤだよしんどいじゃん、これから一緒に暮らすってのに」
手に持っていたビニール袋から缶ビールを二本取り出すと冷蔵庫にしまっている。
お酒飲む人、なんだ。
「ビール好き？一応買ってきた。飲んでいいから」
「…ありがとうございます」
「だから。"ございます" いらない」
「そんな急に敬語やめろって言われても…」
「そこは努力してもらって。ね？」
初対面の人にはしばらく敬語が基本なのでは？
二宮さんみたいにコミュ力高い人と一緒にしないでほしいものだ
「風呂、先に入っていい？」
「あ…はい。…いや、"うん"」
「プハッ、ぎこちないなぁ〜……あ、そうだ！じゃあ一緒に入る？」
「は？」
「仲良くなれるカモ」
「っ……ばか！」
「わ、タメ口飛び越えて暴言！」
逃げろ〜！みたいなノリでお風呂場に掛けてった二宮さんに、私、バカみたい。顔熱くしちゃって。
彼氏いるのに。
それに向こうにも彼女が…
あ？そうそう
それを確かめたかったんだ
「あの！待って！」
「ん？やっぱ一緒に入る？」
脱衣所からひょこっと顔を見せる
せっかく顔の熱が下がりそうだったのに、再熱。
「ちっ…違う！そうじゃなくて…その……彼女いるんでしょ？同居なんて本当にいいの？」
「あれ、ヒトミには言ってなかったっけ…」
二宮さんはボソっと独り言をこぼすと、私の目を見てハッキリ答えた。
「いないよ」
あまりに真っ直ぐなその瞳に、それが嘘だとは一ミリも思わなかった。
と同時に、変な汗が滲み出てくる私の額。
これはとんでもない事実が発覚してしまった。
「い、いないの…？本当に？」
「うん。別れた。最近」
さ、い、き、ん！
ていう事はそれをヒトミに話してなかったって事よね？情報更新されてなかったのか…
「彼氏持ちに手は出さないし、仲良くしてね？Aちゃん」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 601人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ミト
| 作成日時：2019年10月26日 19時
