23.哀しい笑顔 - Ｎ - 11/2 ↓ ページ23
「一応、ね…これくらいは」
帰宅するギリギリまでアイツを祝うか祝わないか迷ってたけど
今日が誕生日だと知ってしまった以上何もしない訳にはいかなくて。
でも、豪勢なケーキを買って行くような空気でもないし。
だからまぁ、たまたま立ち寄ったコンビニで、ほんの気持ち程度でいっかって。
・
「ただいまー」
玄関を開けると家の中は真っ暗だった。
やっぱ泊まり？
誕生日だし有り得るよな
なんだ、ちょっと残念
なんて思いながら靴を脱いだ。
「…あれ」
目に留まったのは雑に脱ぎ捨てられたパンプス。
これで部屋の中にAがいる事は確定したんだけど、あまり良くない雰囲気。
とりあえずパンプスを綺麗に揃えてから、Aの部屋の扉を叩いた。
「…大丈夫か？」
返事がないので勝手に扉を開け、声を掛ける。
電気もついていない部屋の中
月明かりのおかげでAの姿を確認できた。
ベッドを背もたれにして、俯いている。
「A？どうした？」
また飲み過ぎて気分でも悪くしたのか、と部屋の中に足を踏み入れようとしたその時
「……カズ」
顔を上げたAと目が合った。
その瞬間
俺はこれ以上踏み入れない方がいいと判断。
一歩下がった。
「あー…大丈夫？ じゃ、なさそうだけど…」
「うん、、、振られちゃったから」
笑顔なんて見せなくていいのに、
Aは笑ってみせた。
もちろんそれは笑顔とは程遠いもので。
Aの気遣いだけが胸に刺さった。
「悪い、勝手に入って…」
返事をしなかった理由が分かった今、俺は今すぐにここから去るべきだ。
「ううん……あ、何か用だった？」
「いや、何も。…おやすみ」
手に持っていたコンビニの袋を後ろに隠して、扉を閉めた。
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作者名：ミト
| 作成日時：2019年10月26日 19時
