22.冷たいオトコ - N - ページ22
ある日の昼休み。
社員食堂で三人が揃うのは久しぶりだった。
「大ちゃん今日は約束ないんだ？」
「たまにはお前らと食うのもいいかなーって。断った」
「へぇ、断る事もあんだね」
相葉さんは相槌を打ちながら大野さんの定食に付いているプチトマトをかっさらった。
もちろん、それを大野さんが見逃すわけない。
「ちょっと、人の取らないでよ」
「あ、ダメだった？残してんのかなーと思って」
「好きな物は最後に取っとくタイプなの。吐け！」
「むっ無理無理！あはは！ちょっとやめてよ大ちゃん！」
トマトを含んだ相葉さんの頬に大野さんの手が全力で向かう。
いい大人が何を騒いでんだか……と、自分の食事を進めようとしたその時、
一人の女性社員が近づいてきた。
「智さん、こんにちは」
「ん？…あー、どうも」
「今日の夜って空いてます？良かったら一緒に…」
「予定あるから。ごめんね」
目の前で起きた数秒間のやり取り。
手が止まる俺と相葉さん。
淡々と食事を続けている大野さん。
そして、目に涙を溜めて大野さんを睨みつけその場を去った女性社員。
この状況の背景を俺は想像できた。
だけど相葉さんは驚きを隠せない様子で…
「大ちゃん、今の冷た過ぎない？」
「冷たい？どこが」
「話を遮って断るとこ！あの子泣きそうだったよ」
「へぇ」
「"へぇ"って……」
「一回抱いたくらいで馴れ馴れしいんだよ」
「……」
まさか相葉さん、大野さんが色んな女性とただ単に飯に行ってるだけだと思ってたのか？
肉体関係くらいはあると俺は思っていたけど…
だからあえて大野さんには色恋話も振らなかったし…って、
こんな風に考えてる俺は腐ってる？
でもまあ、世の中そういう人もいるでしょ。
特定の彼女は作らない、みたいなさ。
それが通っちゃう人なんだよ、大野智って男は。
「まぁまぁ相葉さん。色んな人がいるよ」
「でも………あ！」
「何」
「今日Aちゃんの誕生日だった。メール送らなきゃ」
「どのタイミングで思い出してんだよ」
突然何かと思ったら……忙しい奴だな
「あ、でも電話の方がいいかなー……」
この人の頭の中はAのことでいっぱい、か。
いつか大野さんにもそういう人が出来ればいいのになぁ……なんてね。
それにしても、誕生日？Aの？
なら同居人として何かした方が良いのか？
でも今日は彼氏に祝ってもらうだろうし
帰ってくるかも分かんないし？
あー、どうすっかな……
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作者名：ミト
| 作成日時：2019年10月26日 19時
