12.デートじゃあるまいし - A - ページ12
「よし、そろそろ行くかな」
時刻はちょうど１８時３０分。
Aちゃんとの約束の為にいつもより早目に仕事を切り上げた。
今日、彼女と会ったらどんな話をしよう
知りたい事がたくさんあった。
「ニノ、お先に。今日Aちゃんとご飯行ってくるから宜しく」
まだ仕事中だったニノに声を掛けると
「うーい」と気怠い返事。
目線はＰＣ画面に向けたままだ。
もしや嫉妬？いや、まさかな。
破局したばかりのニノがそう簡単に好きな人を見つけるわけがない………と、思いたい。
・
エレベーターが開いて、乗り込む。
定時を過ぎたばかりだからか、
中は帰宅する社員たちでまぁまぁの込み具合。
こんなに早く会社を出るなんて久しぶりだな…と、扉が閉まるのを待っていたその時
「乗りまーす」
ギリギリで扉に手を突っ込んで来た一人の男
「お、相葉ちゃん。今日早いね」
大野智だった。
「おつかれ。ちょっと約束があって」
「ふーん。誰と？」
「Aちゃん。ほら、ニノと住んでる」
「あぁ。へぇー」
その相槌を最後に、
彼は１階に着くまで口を開かなかった。
なんだか嫌な予感がする。
「じゃあ、また来週」
エレベーターを降りて大ちゃんに一声掛ける。
嫌な予感がいまだ消えていなかった俺は小走りで会社を出た。
………が、もう手遅れらしい。
「待って相葉ちゃん」
呼び止められてしまった。
「……何？」
「俺も行っていい？」
「なんで？」
「なんでって、なんで？デートじゃあるまいし」
「………」
"デートじゃあるまいし"
あぁ、そうだよ。デートじゃない。
だけど少なくとも俺の気持ちはデート感覚に近いというか
「早く行こーよ。Aちゃん待たせちゃマズイだろ」
「え、待って大ちゃん…！」
強引だ。
実に強引だ……
せっかく二人きりでご飯行けると思ったのに…
今日は諦めるしかない、か。
・
・
・
「あ、Aちゃん居たよ」
先にAちゃんの姿を見つけた大ちゃんは俺のそばから走り出した。
俺はというと走る気力も無く、ゆっくりその後を追いかける。
と同時に、また残念な事に気付いてしまった。
「雅紀ー！智ー！早く早く！」
Aちゃんの隣に、ヒトミが居る。
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作者名：ミト
| 作成日時：2019年10月26日 19時
