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・
「シンイチローって好きな女とかいんの？」
「んー？可愛い子が好きだなー」
「それは本気の好きじゃねーだろ」
ずっと前、そんな話をしたのが始まりだった。
「…Aって幼馴染がいてさ。
ウチにも泊まりに来るくらい仲良かったんだ」
「俺、知らねーけど」
「マンジローはガキだったし覚えてねぇかもな〜。
ソイツ、今何処にいるか分かんねぇんだ。
突然引っ越してから、それっきり。
…会いてぇな……」
タバコをふかしたシンイチローが
寂しそうに笑っていたのを覚えてる。
「どんな奴？」
「んー…気が強くてすぐキレるし口が悪い」
「それ他にもっといい女いんじゃねーの？」
「フッ、まだまだガキだなマンジローは。
他の奴からはそう見えてても
俺からすればAはスゲー優しい。
笑った顔が太陽みたいに明るくて、それ見るたびに守りたいって思うんだ。
マンジローもそんな相手見つけろよ！」
「付き合ってから言えよ」
「それは言うなって…」
・
明け方。
Aが部屋から出てきた。
エマは泣き疲れて寝てしまったけど
俺と爺ちゃんはずっと起きていた。
『…貴重なお時間を、ありがとうございました』
深々と頭を下げられる。
出て行こうとするAに爺ちゃんは昼から葬式がある事を伝えたけど
ゆっくりと首を横に振って答えた。
『…もしも今日
ここに男達が来て私の所在を聞かれたら
大阪に向かったとだけ伝えて下さい』
爺ちゃんに今までのお礼だと言って小切手を無理矢理渡すとAは足早に出て行った。
「…待てよ！」
俺は家を出た所まで追いかけて、声をかけた。
コツコツとした足音が止まり俺の方を振り返る。
『…万次郎。どうしたの』
「……シンイチローの事、どう思ってんの？」
明らかにカタギじゃねぇ。アイツはこの女の
何処に惚れたのか分かんなかったけど
『………大好き。
世界で1番、大好きな人だよ』
あの時の真一郎と、そっくりな笑顔だった。
『…元気でね』
俺の頭を軽く撫でると
今度こそもう、振り向く事は無かった。
・
葬式にはAを探してる奴らが来たけど、言われた通りに答えた。
その後Aがどこへ行ったかは分からない。
それでもシンイチローの命日には必ず
墓に花が手向けられている。
Fin
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きなこだいふく - すごく感動しました。どこか私の大好きな曲を連想させる文章に、思わず号泣してしまいました。夢主と真一郎の不器用な恋愛、いつまでも見ていたかったです。こんな神作をありがとうございました。 (2021年11月6日 20時) (
レス) @page8 id: 283f4f1f4f (このIDを非表示/違反報告)
神楽 - ガチ泣きした。真一郎が夢に出てきて両思いになるオチとか、主人公も殺されてあの世で出会って好きって伝えられるオチとかだったら良かったのにと思ったけど、もしそうだと、こんなに泣ける話は作れなかったのかなと思いました。話を作ってくれてありがとうございました (2021年8月3日 11時) (レス) id: 53c74e92e7 (このIDを非表示/違反報告)
にるき - 泣いた、、、こういうの大好き真一郎かっこよすぎるだろ (2021年8月3日 1時) (レス) id: fa07dff7e6 (このIDを非表示/違反報告)
▼とある黒兎(プロフ) - とても感動して、涙が止まりませんでした。夢主と真一郎の想いや最後の夢主の『………大好き。世界で1番、大好きな人だよ』が凄く凄く素敵でした。この作品と出逢えて良かったです。 (2021年8月2日 2時) (レス) id: cd791d8f9a (このIDを非表示/違反報告)
律架 - 短い話なのに涙ボロボロです。書いてくれてありがとうございます (2021年8月1日 21時) (レス) id: 60eb5664e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：mona
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=academia1st
作成日時：2021年8月1日 5時
