飴玉ボーイ！ (ページ3)

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｢春だねえ｣

｢あれ新入生じゃね｣

先程に較べてすこし緩やかになった瑞稀の歩幅。

横並びになって空を仰げばふらふらと不規則に宙を舞う薄ピンクの花びら。

私たちと異なった色のネクタイを下げている同じ制服の女の子達がこちらをみてざわついているのが確認できる。

｢いいですねーイケメンは｣

｢嫌なんだよ突然キモ｣

｢憎まれ口しか叩けないわけ！？｣

私に釣られて頭上を見上げる横顔は確かにかっこいい。

少し垂れた目尻も、真ん丸な大きな瞳も
それなのに小さな鼻も口も
すらっと長い手足だってまるで漫画の主人公。

それにして成績は優秀で、運動だってできる。
瑞稀に好意を寄せる女の子なんて山ほど見てきたし、告白をせがまれることだってあった。

今だってそうだ
周りよりも一際目立ってしまう瑞稀に寄せられる視線は多い。

だから正直、彼の隣を歩くのは少々度胸がいるものだと私は思っている。

｢だから嫌なんだよなあ｣

｢なにが？｣

｢明日から起こし来なくていいよ｣

｢は？お前起きれねーだろ｣

新入生の好奇心の眼差しが私への敵意に変わるのは時間の問題。

また先が思いやられるなあ、なんて考えると無意識に零れたため息に瑞稀は怪訝そうに首を傾けるのだった。

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