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｢これ、Aさんが考えたって本当？｣
上司が差し出してきたのは、今朝先輩に渡したはずのファイルだった。
｢は、はい…｣
一昨日の終業間際に突然課題を出された。
挙句の果てに一日で形を作ってこいと言われたので、寝る間も惜しみ、無い知恵を絞りに絞って何とか完成させたのだ。
｢明日の企画会議で出してみてもいいかな？｣
｢え？｣
｢まさか二ヶ月足らずでこんな企画出せるなんて、どうして三年も路面店勤務だったの？不思議だよ、俺｣
｢いや、え…？｣
ウチに来てくれてありがとう、というお世話と合わせて握手まで求められて更にパニックになる。
｢ミンソクが嬉しそうに言うんだよ、Aはウチのエースになるって｣
｢え？！｣
｢Aさんさっきから、え？しか言ってないよ｣
上司に対して不躾な態度を取ってしまっていることは重々承知しているが、もはや驚きが勝り言葉が出てこない。
｢これ、三ヶ月の猶予があって今日が締め切りなんだよね。この前、冗談で君に書かせてみたらってミンソクに言ったら、本当にやらせてるんだもん。びっくりだよ｣
いや、びっくりなのはこっちです。と言いたかったが流石に自制して、苦笑いを浮かべ上司を見た。
｢通る通らないは別にして、勉強の一環として出してみようよ｣
｢すごくありがたいお話ですが、今回は見送らせていただけないでしょうか？｣
｢どうして？｣
｢僭越ながら、これは研修の課題として作成した物です。会議には先輩方が本気で商品化を目指して企画された物が提出されているのに……先輩方に申し訳ないです｣
出過ぎたことを申しましてすみません、と深くお辞儀をする。少しの沈黙の後、上司は声を弾ませた。
｢やっぱりミンソクは見る目があるな！アイツを教育係にして良かったよ｣
｢え？｣
｢また、え？が出てる。いや、本当に君には感心する。わかった！今回は出さない。これは研修の成果として俺が預かっておくよ｣
｢本当ですか？｣
｢うん、約束する｣
｢ありがとうございます。しっかり勉強して早く会社に貢献出来るよう頑張ります！｣
｢頼もしいな〜！｣
ガハハ、と豪快に笑う上司につられて自然と笑みが零れた。
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作者名：ココア豆乳 | 作成日時：2021年7月1日 17時
