【被虐のノエル】戻れなくなった天使。〜序章〜

市長官邸って。 ページ19

「あら、A。目が腫れてますわよ？」

「え、嘘。」

「本当ですわ！使用人に嘘を吐く主人がどこにいるんですの！？」


意外と居るんだよ、そういう人間。

まぁお嬢様には判らない事か。


「大丈夫……かも。」

「なんですの！その曖昧な答えは！」

「んー……お嬢様、凄く申し訳ないんですけど。」

「な、なんですの……？」


今言っても良い物か。

自分の中で葛藤が生まれる。

お嬢様に嫌われるのではないか。否、いっその事嫌ってくれれば楽に市長官邸とやらに行けるのではないか。

心配性なこのワガママ生意気お嬢様が悲しまないだろうか。

否、考えすぎか。

自分にはどうしていいものか、判らないものとなっていく。

どうしよう、このままじゃ手が付けられなくなる。


「お、お嬢様って…………『市長官邸』って場所、知ってます？」


何とか、市長官邸って言葉を出したけど……

そうじゃないだろ、自分！！

誤魔化した、も良い処だよ！


「し、市長官邸？当然、知ってますわ。常識ですわよ。」

「へぇ……常識なんだぁ。」

「……まさか、知らなかったんですの？」


うん。

へぇ、そっかぁ、常識なんだぁ。

たまげたなぁ。

と遠い目をしていると、ノエルお嬢様に呆れたような目で見られた。


「いつもお散歩する時に自然公園に行くでしょう。その真ん中にある大きな屋敷が市長官邸ですわ。」

「あ、あれだったんだ。」

「あなたの無知には呆れるばかりですわ。」


と溜息まで吐かれて呆れられた。


「うん。それは“仕方ない”という一言で済ませて下さい。」

「それはそうと、何でそれが申し訳ないという言葉に繋がりますの？」

「……聞きたいですか？」

「聞きたいに決まってますわ！」


焦らしは嫌いな人だしなぁ……。

悪く言えば、短気。

まぁ本人が聞きたがっている訳だ。言っても良いか。

もう言おう。

さっさと言ってしまった方が楽かも知れない。

私はしゃがんでノエルお嬢様と目を合わせた。

とりあえず、三日。→←二年間。

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