黒いきつねの恋物語（賢者の石）1-③ (ページ10)

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12-10 石のことページ10

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甘い香りの漂う暖かい室内。

カントリー風の室内に似つかわしくない格好の部屋の主がこれまた部屋に似合わない２人の客にお茶を出す。

「・・台所を作ったのか」

『いつでも食事ができて便利です。しもべ妖精に会いに時々厨房にも行ってますけど』

「お、美味しいショート、ケ、ケーキですね」

吃る余裕できたんですね。
Aはクィレルに優しい眼差しを向けた。

第２回作戦会議は開始早々からお茶会になっている。

先日発売された新作は相変わらずのベストセラーのようだが３人に目立った被害はない。

毎日手紙を届けに来た梟は来なくなったし、先生や生徒も落ち着きを取り戻している。

正確に言うと作中に自分と分かる名前を使われて被害を受けているわけだが、どこをどう探しても見つからない作者は探す方に負担がかかる。

目立った被害も受けていないため、わざわざ注目を浴びて自分から声をあげない方が良いとなったのだ。

『面白い薬材を買ったので、後で見ていただけませんか？』

温かく、楽しい時間。

のんびりと言い、Aは微笑んだ。