自問自答 y.r ページ44
矢花黎
僕、やっぱり駄目なんですね。誰よりもだかさんに懐かれてる自信があったし、正直大光よりは脈アリだとずっと思っていた。
いや、懐かれているのは多分本当。
「矢花が俺なんかのこと好きになってくれて有難うね。」
ずっと引っかかっている。
だかさんの「俺なんか」。俺からしたら、だかさんは頭も良くて顔も良くてダンスも大光とは違った上手さがあって、ファンにかっこいい所を見せようと頑張る素敵な人間だ。沼深い。
そんなだかさんと俺は絶対釣り合わないと思っているし、同じグループにならなかったらここまで親しい関係にもなっていなかった。
俺は出会った時からずっと「イケメン」なだかさんに驚いたし、興味があった。ずっと、ずっと……触れてみたいと思っていた。そんなだかさんに今は頼られて、当時は知らなかった甘い声で名前を呼ばれて。ああ、もしかして俺は今も凄く幸せなのか？
呆れるくらいに自問自答をするが、答えなんて分からない。答えに見つかって欲しくないとすら思う。
ああ、ぜっんぜん、
「しあわせ」
「無理しなくていいんだよ」
瞳から涙が溢れそうになった時、薄暗くて汚い空間が、桃色がかった空気で満たされた。
「こんぴ……」
なんだよ、こんな時に限って年下扱いすんなよ。たったひとつだけ違うだけなのに、なのに、簡単に救われてしまう。
「矢花は十分頑張ってるよ。」
ひねくれた人間だからか、頑張れなんて言葉はとても嫌いだった。頑張れ＝応援の言葉だと思う人間は愚かだとすら思った。
その大嫌いな頑張れの進化系にいま涙をこぼしている。
メンバーにも家族にも、涙なんて見せたくなかったのにな。
こんぴの意外と大きい手が、俺の頭の中のいろんな思考を止めようと優しく撫でられる。
考えちゃだめ、だかさんのことは……
だかさんの、ことは……
だめ。ってわかってるのになぁ。
「本当に、大好きだったんだけどな……」
「克樹って、諦めさせてくれないんだよね」
「本当に……それは激しくいいねしたい……」
「いいねって……矢花らし」
優しくされると泣いちゃうのよ。
ああ、もうなんにもやりたくないや。
ぷかぷかとだかさんの海に沈んで消えてしまいたい
じゃなくて、
前を向かなきゃですね。
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作者名：標 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/kiyo0630201/
作成日時：2021年4月26日 9時
