プリムラ 3 (ページ42)

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矢花① m.k ページ42

本髙克樹

「悲しい顔って。そりゃあ好きな人に可愛いなんて言われても全然嬉しくないですよ。」

くっきりとした輪郭をなぞるように頬を撫でられる。矢花の清潔感のある匂いに俺の全部を包み込まれてしまった。

「やば…」

「好きです」

「や、」

「だかさん好きです」

「あの……」

「克樹好きだよ」

突然始まった矢花からの好き攻めに頭が追いつかない。
大光と初めて手を繋いだ時くらい心臓がばくばくしている。若しかしたら矢花に聞こえちゃってるかもしれない。

「やばな、苦しいから離して……」

「離さない」

「えぇ」

「だかさんがちゃんと返事してくれるまで離さない。」

「へ、返事？」

「告白の返事、急かしたくないんですけど出来たらはやめに欲しいです。」

矢花の顔が見れない。

矢花の顔を見てしまったら、この甘い空気に吸い込まれてしまいそうで。

「克樹好きです」

「う、ん」

「だかさんのこと俺なら泣かせないです。幸せにします。」

「わ、わかったから！」

「だかさん全然わかってない。その曖昧な返事が1番嫌です。はっきり言ってください。」

はっきりってなに……俺だって大光しか好きじゃないって行動で示してるのに。わかんない。こんぴに助けを求めたい。でも今はひとりで頑張らなくちゃ。

「俺の事、好きですか？それとも嫌いですか？」

「す、好きか嫌いだったら好きだよ」

「俺にドキドキする？」

「……今してる……」

「俺が大光みたいに、だかさんにキスとかしたらどんなふうに思いますか？」

「そ、そんなのわかんない……矢花としたことないもん。」

「あ〜そういうのも駄目なんだよ」って小声で言われた気がする。好き攻めの次は質問攻め？俺の悪い所で、自分がどうしていいのかわからなくなると逃げたくなっちゃって変な返しをしてしまう。それは絶対に避けたい。矢花の悲しい顔も見たくないもん。

「……じゃあ、今キスしていいですか？」

「それは駄目！」

「ふふ。そんなに焦らなくてもしないですよ。」

悪戯げに笑う矢花にちょっとだけキュンとしてしまった。悲しいことに、顔に感情が全部出てしまう俺は矢花に「怯えてるんですか、可愛いですね」なんて言われてしまった。矢花はこう言う台詞を言うのに慣れてるのかな。スラスラ言えてすごい。

　