プリムラ 3 (ページ33)

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無題 y.r ページ33

矢花黎

「こんぴ、俺だかさんのこと諦めますわ」

沢山相談に乗ってくれたこんぴにメッセージを送る。まだだかさんと一緒にいたら申し訳ないけど。

だかさんが大光のことを大好きなのは知ってたし、俺はそんなだかさんだって大好きなはずだった。

でも今は全然好きじゃない。

大光の隣で笑うだかさんを見ると苦しい。

大光のことは好きだ。大光も俺のことを好いてくれているし、普通に二人でご飯行ったり動画撮ったりもする。

……てかキスもされる(だかさんと間接キス)。

大光のことも好きだから辛い。大光のことを好きじゃなかったら、沢山アピールもしたし少し酷いやり方でもだかさんを落とした。でも俺は……だかさんの悲しい顔も大光の悲しい顔も見たくない。

それに、だかさんの恋人をする大光はめちゃくちゃかっこいい。俺には戦えない。

だから、もう。

膝の上に乗せたままのスマホがぶるぶると動く。
画面に目をやると、こんぴからのメッセージ。

「ふーん、そうなんだ」

だけだった。

え？これだけ？なんかさ、引き止めるとかないの？

いや、引き止めてもらえると思ってる俺ダサすぎないか？引き止めて欲しいと思ってるってことは結局は、やっぱり、俺は

なんだかこんぴに幻滅されてしまう気がして、勢いで電話マークをタップする。

「もしもし」
「こんぴ！俺、諦めないから」
「え？なにが？」
「だかさんのこと！だかさんにちゃんと振られるまで諦めない」
「……」
「え？なんか違った？」
「いや、矢花もちゃんと男なんだなと思っただけだよ。がんばれ、応援してる。」
「有難う」
「あ、でも克樹を怯えさせたことだけは謝ってあげてね」
「うん」

電話が切れる前にだかさんみたいなぽわぽわした声が電話の奥から聞こえた。まだだかさんと一緒にいたんだ、申し訳ないな。

でもこんぴにこうやって言われるとすごい頑張ろうという気持ちになれる。こんぴって、だかさんとは違う系統のふわふわさがあるけど結構男らしくて一言一言にちゃんと気持ちが籠っててかっこいい。

恋愛をするなんて久しぶりすぎる、というか元々気になる異性が出来てもなかなかアピールとか駆け引きとか出来なくてずっと苦手分野だった。

同性ってだけでもかなり難しいのに、だかさんというあの天然赤子。

でも、そんなの関係ないくらい好きだからちゃんと向き合います。