プリムラ 3 (ページ25)

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覚悟 y.r ページ25

矢花黎

「や、ばな……」

弱々しく漏れる声。
きっとだかさん、どうしたらいいのか分からないんだろうな。

頬は桃色で唇は俺と違って血色のある綺麗な色。お気に入りのリップも毎日塗っていてほんと……

顔が近づくとだかさんはキュッと目を瞑る。

これはどういう意味なのか。
ただどうすればいいかわからなくて思わず目をつぶってしまっただけなのか、俺にキスされてもいいと思っているのか。

頼むから前者であってくれ、後者だったらだかさん罪な人間すぎる。いや、もう既に罪な人間なんだけども。

俺の手にだかさんの涙が流れてくる。

怯えてるんじゃん。逃げれないの知っててやってるんだけど、流石にちょっと罪悪感。

触れるか触れないかギリギリの所で止まると、だかさんは「やばな？」なんて言いながら目をぱちぱちさせている。

「ふふ、だかさんびっくりしましたか？」
「……え？どういうこと？」
「ドッキリですよ、だかさんの反応気になって」
「な、なんだドッキリか〜〜」

いやこんなドッキリ可笑しいでしょ、だかさん俺のことも少しは疑った方がいいですよ。でも、俺のこと頼って信用してくれるだかさんが愛しいので今のままでも構わないんですけど。

「もう……俺、ドキドキしちゃったじゃん……」

「え？」

「あっ、いやなんでもない」聞こえない。なにも聞こえない。ドキドキしちゃったじゃんってなに。そんな、唇に触れながら言うことじゃないでしょ。

「だかさんは、大光以外にこんなふうに触れられてドキドキしちゃうんですか？」
「しな、いっ、やばなやめて…… 」
「でも俺にはドキドキするんですか？」
「だって、矢花にいきなりこんなことされたら誰だってドキドキするよ！」

"矢花"にね。

そんな言い方されたら、まだ俺にも希望あるのかなって思ってしまう。あるはずないのに。だかさんは大光に夢中だし、だかさんがもし俺のことを好きになってくれても大光がそれを許さない。別れない限りだかさんが俺の恋人になってくれるなんて有り得ないのに。

いや、恋人じゃなくていい。
でもただ傍にいるだけじゃ嫌だ。

「やばなじゃなくて、黎って言ってください」
「れ、れい……」
「だかさん、好きですよ。」

覚悟を決めた。あなたにどれだけ拒否されても、愛を伝えます。

　