プリムラ 3 (ページ24)

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練習 y.r ページ24

矢花黎

やばいやばい忘れ物した！
片耳にイヤホンをつけながら全力でダッシュ。
20歳にもなれば体力は段々落ちてくる。かなりキツイ。

やっと着いて、ドアの前で息を整える。
ちらりと見ると人影が。
なんか丸っこいな、だかさんかな。
他に誰もいなさそうだし、ツイてるなと思い

「だかさーん、何してるんで……」

「や、やばなっ？！」

真っ赤な顔に潤んだ目。両手でかなりリアルな魚のクッション？を持っている。それで、魚の口に自分のそれ重ねてました……よね？

「あ、あの。今のは見なかったことにしてください……」

だかさんには申し訳ないけど、全然見なかったことにしないです。めちゃくちゃ頭に焼き付いてます。ごめんなさい。

「やばな」

俺より大きいはずなのにすっごく小さいだかさん。その頭の形どうなってるの。なで肩で、全体的にまるくて。でも前より細くなってかっこよさも増していて。

そんな顔で俺の名前を呼ばないで。

「なんか喋って」
「あ、すみません。」

あまりにも可愛くて見つめていたらだかさんに怒られてしまった。だかさんって頭がいいはずなのに、怒る時とかワンパターンしかなくて可愛い。

って、呑気にそんなことを考えている場合ではないんだよな。この空気はかなり不味いし、そもそもの目的は忘れ物だから。

先程までいた場所に忘れ物を確認し、「だかさん失礼しました」って言えば完璧。と思ってたのに。

「やばな待って」

ああ。そうやって、なんで引き止めちゃうの。
どうせ大光に自分からしたくて練習してたんですよね。わかってます。別に深堀しないで帰るつもりだったのに、なんで。

「どうかしましたか？」
「……」
「だかさん？」
「やばななら、どうやってキスされたらうれしい？」

だかさんはお馬鹿さんですね。貴方のことを想っている男に、そんな可愛い顔でそんなことを聞くなんて。

だかさん、大光。ごめんなさい。

「だかさん」
「な、なあに……」

頬を触られてびくりとするとだかさん。大光にこんなふうにされてもきっとニコニコするだけで終わるんだろうなって。

逸らそうとするだかさんの目を射止める。

「俺でしてみますか？キスの練習」
「な、何言って……」
「だかさん。俺は本気ですよ。」

怯えるだかさん。なんでかな、物凄い唆る。

　