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第九十話 ページ10

家庭教師の仕事を終え、マンションを出て空を見た。辺りはすっかり暗くなっていて少し肌寒い。
手を擦り合わせ摩擦で暖を取りながら歩きだす。
この世界に来て、どれだけ経ったのだろうか。忙しない日々を過ごしていたためか考えもしなかった。

街灯に照らされた道を歩く。今は帰宅ラッシュの時間だろうに、私以外の人が見当たらない。
住宅街なのに、あまりにも静けさを帯びている。
私の足音だけが響いていて、少し不気味だ。タクシーで帰れば良かったか。
身震いをし、早足でかける。

ここにいてはいけない気がした。
すぐさま零に会いたい、零の元に帰りたい。その一心で足を進めると
少し先の曲がり角に、人影が見えた。
なんだろう、嫌な予感がする。


「……誰だ」


相手にしてはいけない、直感がそう伝えるのに。
声をかけずにはいられなかった。


「こんばんは、今夜は肌寒いですね」


……沖矢、昴。


「こんな時間に女性が一人は危ないですよ」

「…どうも」


なんだ、この不信感は。探られているような眼差しを向けられている。
彼の正体はもちろん知っている。アニメで見たし、生徒の誰かが彼のことを推していた。
FBI捜査官、赤井秀一。


「お仕事帰りですか?」

「それがどうしましたか?」

「いえ、深い意味は」


ふむ、とでも言いたげな表情で口元に手をあて考え込んでいた。


「あなたのお話はコナンくんから聞いていますよ」

「はあ」


この世界は個人情報を安易にばらまいていいものなのか?


「心配はいりませんよ、私は口が堅いですので」

「私は貴方を知りませんけど」

「沖矢昴といいます」


あの時、ジンの姿が脳裏に見えた時
コナンくんに少しではあるが詳細を伝えてしまったからか、、、
言わなければ良かった、と心底後悔する。
私はただ零といたいだけなのに。
何故、知らない記憶が現れるのか。あれ以来、あの光景だけが夢に出てくる。夢だ夢だと、気にとめないようにしていたけれど
沖矢昴は何故、私に接近したのか。あの僅かな情報だけで、この人が動くことなのか。
いや、コナンくんだからなのだろうか。簡単にFBIを動かせる信頼を得ている人物だからか。


「その後、記憶はどうですか?」

「ああ、変わりないですよ。あの場所にいた理由は未だわかりません」

「そうですか…」


零の時と同じだろう、知らぬ間にあの場にいた。ただそれだけだ。

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作者名:yu-kun | 作成日時:2023年4月5日 4時

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