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第百話 ページ20

「A」


愛しい人に名前を呼ばれ、ご飯を作っていた手を止める。
振り返り軽くキスをし、今日の夕飯について話す。たわいのない会話、それだけなのにこんな気持ちになるなんて


「今日はもうお仕事ないの?」

「うん、組織の件も片付いたから当分非番の日に呼び出しくらうことなんてないと思う」

「そっか、それなのにポアロを続けてるのは零らしいね」


あれから、本当に色々変わった。零達公安部はFBIと、コナンくんと手を組み組織を壊滅に追いやった。
その結果、コナンくんは工藤新一に戻って沖矢昴は赤井秀一に。
それでも全てとは言えないけれど、少しずつ戻りつつあるらしい。
志保は、そのまま灰原哀で居ることを選んだ。


「ねえ、零」

「んー?」


零は私を椅子に座らせ、調理を変わってくれた。


「私たち、いい親になれるかな」

「…どうだろうね、でも僕は君とその子のためならなんだってするよ」


私と零が結婚して1年、月のものが止まったことにより検査薬を使用
そこには陽性が示されていた。
産婦人科にいくと、胎嚢を確認
次の健診で鼓動が確認され、妊娠が確定されたのだ。

未だ、ちゃんとした母親になれる自信はない

それでも、この人がいるから、この人となら。


「大好きよ、零」

「僕も、愛してる」


突然現れた小さかった零、あの時私のところに来てくれて、私を信用してくれた。
そのおかげで、今がある。
目を閉じれば思い出す、私がいた世界のことを。
29年間、私はあの世界で古谷Aとして生きてきた。人並みに辛い経験もしたしそれ以上に楽しかった事もあった。
あの世界が私の全てだった。
でも、違ったんだ。零に出会ってから。
どちらとも、私が生まれ育った世界なんだ。


「ほら、盛り付けたよ」

「ありがとう、この子の分もたくさん食べないと」


自分のお腹を優しく撫でる。すると、零は跪きお腹に頬を当て胎動を感じようとした。


「……僕の息子くんはこういう時に限って動かないな」

「あったしかに、、零がくっつくと動かないね」


この状況に我慢できず吹き出すと、零は悔しそうにはにかんだ。


「さ、食べようか」

「うん、いただきます」


あの日と変わらずがっつくように食べる彼を見て、私も口に運ぶ。
こんな幸せが、永遠に続きますように。

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作者名:yu-kun | 作成日時:2023年4月5日 4時

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