第九十八話 ページ18
「し、ほ」
阿笠邸を前にして、僅かな緊張が走る。
あの時の私とは姿形が違うから、気づいてもらえるかな。
緊張と不安を抱え、インターホンに手を伸ばす。
「あれ、Aさん？」
すると、小さな名探偵の声が聞こえた。
「コナンくん」
「博士の家に何か用事？」
そうだ、まだ彼には話してない。迂闊なおしゃべりは禁物だな。
「うん、そんなところ」
「…へぇ、2人は繋がりがあったんだ？」
「うん」
「僕も丁度用があったんだ！ついてっていい？」
彼にも、話しておこうと快く許諾しインターホンを押した。
すると、聞こえたのは志保の声だった。
「はい」
「…志保」
私の口から、灰原哀の本名が紡がれたから彼はあからさまな動揺を見せた。
インターホン越しにも僅かな動揺が感じられた。
「……志保、開けて…開けてよ…」
寂しくて、切なくて涙が出そうになる。
声が震え、上擦る。
「…っAなの！？」
勢いよく扉が開く、そこには灰原哀の姿があった。
慌てて出てきたのであろう、片方の足にしかスリッパを履いていない。
「志保ぉ…」
彼女の姿が目に入った途端、溜まっていた涙が爆発したかのように流れ出した。
やっと会えた、大好きな志保に。
「会いたかっ」
「ちょっと！誰かに見られたら大変でしょっ、江戸川くんも早く入ってっ」
手を引かれ、玄関の中に押し込まれるように入れられた。
「あなたっ、本当にAなの！？」
「そうだよ、No.00だよ」
「どうして今まで忘れていたのかしら…あなたが私の名前を呼んだ瞬間、Aのことを思い出したわ」
「それはね…」
リビングまで案内してもらい、博士も交え今までの事を話した。もちろん、あの世界のことも。
最初は信じられないと疑っていた皆は私の話はリアリティであることと、コナンくんが感じていた違和感と全て繋がること、みんなの正体を知っていることを裏付け信じてくれた。
「だから、Aの記憶も抜け落ちたと」
「そうだと思う…」
「そんなの非科学的でしかないけれど、信じるしか無さそうね」
そう言って、あの頃のように志保は私の頭を撫でた。
コナンくんも腑に落ちたようで、笑って私たちを見ていた。
次は、蘭さんと梓さんだ。
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作者名：yu-kun | 作成日時：2023年4月5日 4時
