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第九十七話 ページ17

2次元と3次元とじゃあ、情報量も常識も違う。
莫大な、私の脳では処理しきれない情報があの日
瀬田の家からの帰り道、流れ込んできた。
頭が破裂しそうなくらいな痛みで、立っていられなくなり意識を無くしたと同時に道路に体が打ち付けられた。
重力と言うものは恐ろしいもので、そのせいで身体中傷だらけになっていたのだ。
そのまま入れ替わったためか、この世界の私の容姿は今の私のままだったため
志保も気づかなかったという事か。


「ああ…、会いたいな」


志保…私の管理人に。


「…A」


零は私の名を呟き、力強く引き寄せられる。
彼の胸へと収まれば、優しく私を抱え込んだ。
目を瞑ると零の心音と私の心音が聞こえてくる。
重なり合ったこの音は、私を安心させるかのように静かに響いた。

これからの事を考えられる程落ち着いていられないため、ほとんどの事を零へと任せた。
私は体を安静にする事と、家庭教師の仕事だけをこなした。
仕事をしている時だけ、いつもの自分でいられたが
家に帰ると少しずつ処理している情報を片付けるためか泥のように眠った。



月日は流れ、私の証人保護プログラムは通過され
新たな名前、新たな人生を歩むことになった。

安室A。それが私の、今の名前だ。

徐々に体が落ち着いてきた頃、私はある決断を下した。


「零」


私は洗濯物を畳みながら、彼は机を拭きながら話した。


「私、志保に会ってくるよ」

「…居場所を知っているの?」

「うん、知ってるよ」


彼女の居場所も、正体も。
この記憶が流れてきてから、志保に会いたくて仕方がないんだ。
私はいつも彼女のことを考えていた。
いつだって、組織の実験台だった時も、志保がいなくなった時も、逃げた時も。
忘れたことは無かったんだよ、私は。


「近くまで送るよ」


それ以上は何も聞かず、零は優しく微笑んだ。
彼にお礼をし、また洗濯物に目を向けた。

ああそうだ、梓さんにだって蘭さんにだって心配をかけている。
早く言わないと、記憶を取り戻したって。

自分の左手の薬指に目を向ける。
あの日の、ペアリングに。
彼の胸元のネックレスも、同じ光で輝いた。

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作者名:yu-kun | 作成日時:2023年4月5日 4時

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