第九十五話 ページ15
暖かい、零の温もり。抱きしめてくれてるのかな、ああまだ目が開かないや。
ふわふわしていて心地よい。ずっとこのままでいたい。
そういうわけにも、いかないか。
「れ、い」
ああ、喉が乾いたな。
「…おはよう、A。水飲める?」
「ありが、と」
枕元に準備してくれていたのであろう、常温のペットボトルを手渡された。
「心配したよ」
水を飲みながら不安げな顔の零を見る。
どれだけ心配させたのであろう、ずっと私の看病をしてくれていたようだし申し訳ない。
「ごめん、零。私…」
「Aに言わなくてはならいことがあるんだ。A、Aは…どういうわけかわからないけどこの世界に君がいた証明があるんだ。戸籍もあるし、それに伴うデータも」
「…知ってるよ」
「え…?」
汗ばんだ体が嫌になり、ベッドから立ち上がると少しよろけてしまって
零が慌てて支えてくれた。
「…私は、この世界の人間だよ」
死んだ、この世界の私と元の世界の私は一心同体で。
先に死んだ私と入れ替わっただけだから。
全部、知ってる。記憶にある。
「私は古谷Aで、古谷和希と古谷皐月の娘。黒ずくめの組織の被検体。そこでは、No.00」
「…そこまで、知っているのか」
「知っているんじゃなくて、それが私なんだ」
元の世界に未練がないと言えば嘘になる。あそこには私の生きた証がある。
家族との思い出の家、おばあちゃん、瀬田、佐藤…今まで受け持った子どもたち。
また会いたい、会いたいけど
私の居場所はここだから。
「…今のままでは危ないんだ。Aは組織に始末されたことになっているから、証人保護プログラムを受けてもらうよ」
「そう、だな。わかったよ」
そうだった、思い出した。
あの時、私が死んだ時極限まで私と、この世界の私の感覚はリンクして
名探偵コナンの事が、私に流れてきて
逃げてきたんだ。コナンくんのところに。
そして、息絶える瞬間
私と、私が入れ替わった。
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作者名:yu-kun | 作成日時:2023年4月5日 4時