さよならをするために -O.S- (ページ4)

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店内の冷房はよく効いていて、少し肌寒いくらいだ。

先ほど注文した二人分のケーキセットは、未だに運ばれてくる気配はない。

マスターとおかみさんのふたりで営んでいるこの店は、配膳までの待ち時間が長い。

大野先生はこの店のそんなところも気に入っているようだった。

私たちの学校がある町から少し離れた場所にこの喫茶店はあった。

学校の近所にずっと昔からある「喫茶ろまん」とよく似たこの店に先生に連れて来てもらうのは、今日が初めてのことだった。

全く知らない町の小さな喫茶店で、何でもない時間をただ一緒に過ごす。

私と先生の関係では、それが限界だった。

例えば友人たちのように買い物へ出かけて洋服を選び合ったり、お揃いのものを買って写真を撮ったりということをしたくないわけではないが、ふたりの関係は非社会的なものであって、決して正当化されることはない。

そしてもしこの事実が明るみに出たとき、何もかもを失うのは私ではなく先生だ。

世間は必ず先生を非難する。

そんなリスクを犯してまで私のわがままに付き合ってくれているこの人を、そんな目に遭わせるわけにはいかなかった。