さよならをするために -O.S- (ページ3)

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私と大野先生は、期間限定の恋をしていた。

私が卒業するまでの、半年間の恋。

「先生、手繋いでもいいですか？」

「どうぞ」

差し出された手に自分の手を重ねる。

細くて長いのに男らしい魅力も感じる指が私の指と絡まって、まるで心臓まで一緒に握られたように苦しくなる。

先生は決して、自分から私に触れてはくれなかった。

「もういいんですか？」

「うん。下描きは大体終わったし」

「先生は休み時間も絵を描いてるの？」

「時間があるときとか、何か浮かんだときに描いてる」

くたびれたソファにふたりで並んで座り、手を繋いだままとりとめのない時間を過ごす。

それだけで私は満ち足りていた。

この美術準備室には誰も入って来ない。

邪魔なものは何もない。私と先生だけの時間。

「そろそろ授業始まるよ。教室戻りな」

時計を眺めているその横顔を見つめる。

まだ離れたくない。もっと触れていたい。

ふたりだけの時間を、終わらせようとしないで。

「先生」

「ん？」

「キスしてほしいです」

先生は困ったように笑うと、首を傾けてそっと唇に触れた。

一度触れてしまえば、もう離れられない。