ただの都合の良い女だから《橙》 (ページ9)

今日:34 hit、昨日:5 hit、合計:148,543 hit

2 ページ9

_

今日は華の金曜日

もちろん今日もバーに来た。

明日は休みだし、今日はちょっと強めのね、

なんてマスターに頼んだら、任せてよ、って
目を細めて口角上げるマスター

少しキツイけど、美味しいな〜なんて思いながら辺りを見渡すのは、もちろん今朝まで一緒にいた康二くんが来てないか確認するため。

残念ながらいないけど。

一昨日も見えたんだし、今日もいるでしょーなんて淡い期待を抱いてた私だけど

30分経っても、1時間経っても、2時間経っても康二くんは現れなかった。

もしかして......避けられてんの。

なんだか切なかった。

一昨日出会って、昨日身体を重ねただけなのに

今日も来てくれるかなって康二くんを待ってて

私が康二くんに特別な感情抱いてるみたいで、

いやたぶんそうで、

ただの癒しの私が何期待してんだって馬鹿馬鹿しくなった。

「マスター、お会計で」

早く帰って、康二くんのことなんて忘れよう

たかがワンナイト、

なんて思いながら会計を進める。

『え、今日早くない?
　3杯しか飲んでないじゃん』

「今日は気分じゃないの」

『金曜でしょ、もっといなよ』

「んー、帰る」

『Aちゃんみたいに毎日飲みにくる酒豪はもはや太客みたいなもんなのに、残念だわ』

「ふふ、正直すぎ、マスター」

マスターはどうやら帰ってほしくなさそう、

いや嘘、マスターなりに心配してくれてるのよ。

『まあそっか、気をつけて帰りな。
　あと......昨日ごめんね、康二くんのこと』

「あー、いや、大丈夫です。
　ただのワンナイトだから」

『Aちゃん.......惚れ』

「じゃあ失礼、」

そう言ってマスターには背を向けた。

また明日、マスター。

_