ただの都合の良い女だから《橙》 (ページ48)

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大事なものができたって言うと、一瞬で焦りだす康二。

『は？......は？！

　な、何言ってんの？！俺、今プロポ』

まあそりゃ焦るよね。

プロポーズした直後に、大切なものができた、

なんてやばいにも程がある。

「ここ、」

だから私は、小さな命が宿るこのお腹に康二の手を当てた。

『待って......ほんま、無理、

　え、ほんまやんな？俺とAの赤ちゃん、できたんや...え？信じられへん』

「ふふ、だからごめん、

　康二は2番目」

『えぇぇ！
　嬉しいけど、嬉しくない！俺も一位にして〜！！』

康二は、私たちに命が宿った嬉しさとプロポーズが成功した嬉しさと、いきなり2番目になってしまったというトリプルパンチのせいか

涙で顔がぐちゃぐちゃだった。

「んふふ、康二も一緒に、守っていこう？」

『...もちろんや、

　ありがとう、ほんまにありがとう、A』

「こちらこそ、ありがとね」

『あかちゃーん！
　俺らのもとにやってきてくれて、ありがとうなー！」

「ふふ、赤ちゃんにお礼言ってどうするの」

『なーにいってんのっ
　聞こえてるかもしれへんやろ？パパの声』

康二ったら、もうパパの気分になったみたいで切り替えの鬼だな、ほんと

でもこんな康二を見てたら

この人でよかった、

この人が、この子のパパでよかったって心から思った。

そして私たちは入籍した。

1年前は都合の良い関係性だったのが、夫婦になった。

ねぇ、私、
都合の良い女、卒業したよ。

『A、』

「ん？」

『Aとこの子は、俺のすべてや。
　大切にする。

　
　愛してるで』

fin.