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「翔太、」
マスターには、以前翔太を紹介したことがある。
翔太があまりここに来ることはないけど、
気を遣って呼んでくれたんだね。
『A......』
私の名を呼んで、抱き締めてくれた。
「しょ、た.....」
この間のことがあって、
正直私は翔太のこと避けてた。
頻繁にしてたLINEだって、私から送れなくなってて、
それよりも康二くんのことが気になってどうしようもなかったんだけど。
なのに、私甘えちゃってる。
いつもそうだよ。
今まで散々な振られ方してきたし、浮気だってされた。
その度に、"お前がどんな男に振られても、俺が励ましてやっから"って、
『...泣きたかったら、泣いて』
「......ぅ....」
翔太は私が泣き止むまでずっと抱き締めて、頭を撫でてくれた。
今までの話も聞いてもらって、
また泣いて。
涙枯れちゃいそうなくらい。
すると、翔太はボソッとこう言った。
『Aを傷付けるようなヤツは許さない、』
「...でも、はじめは、
私だって"都合のいい女"でよかったの」
『それでも、好きになったんだろ。
Aはそいつの彼女になりたいって思うようになって、告白もされて、幸せだったんだろ？
それでいきなり音沙汰無しって、誰でもつらいわ』
「康二くん、...」
『Aはほんと、いい男に捕まんないな』
「康二くんは、悪くない、」
散々話を聞いてもらったけど、
大好きな康二くんのことを悪く言われるのは胸が痛んで、翔太に何を言われても庇ってたら溜息つかれた。
こんな私の話も優しく聞いてくれる従兄弟の翔太。
マスターに注がれたカクテルを口にして、酔いが回ったからか、
『ねぇ、俺とじゃ、ダメなの？』
目を潤ませてそう言った。
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作者名：あやの | 作成日時：2021年7月7日 9時
