ただの都合の良い女だから《橙》 (ページ39)

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こんな時に限って、康二くんと過ごした楽しかった時間を思い出す。

あの笑顔、嘘だったのかな。

永遠の愛、どこ行ったの?

私の寝顔見て、微笑んでたよね。

ペアリングにこだわってたの、康二くんだったよね。

思い返せば返すほど、心臓が苦しくて苦しくて、

でもやっぱり、誤解した私が馬鹿だった。

その結論に至った。

「マスター、」

『え？待ってAちゃんじゃん！久しぶり！

　....って、どうしたの？』

康二くんと知り合ってからしばらくきてなかったバー。

康二くんと関係をもってからは、仕事の後だって休みの日だって、康二くんといてたから、ここにくる必要がなかったの。

私を"太客"だって言って可愛がってくれたマスターは、こんな私に特別な席を案内してくれた。

『Aちゃん、ここ、個室だからゆっくりしてって』

そう言うと、いつもなら注文聞いてくるのに、水を用意してくれてて、

『お酒がいい?

　つらかったら話も聞くし、あ、寒かったら白湯用意しようか？』

優しくしてくれるマスターに、私の居場所、ここだったんだって、

そう感じた。

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