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『ほんと、アイツどうにかなんない？
別に項垂れててもいいんだけど、あそこまで凹んでたら俺も虚しくなってきてさ、
何て声かけていいかもわかんないんだよね』
「マスターでも困るって相当だよ〜」
『ちょ、お願い、今日のお代無しにするからさ、なんとかなんない？』
昨日隣の女を口説いた康二さんを知ってるくせにそんなこと言うって、
ねぇ、
「それって、康二さんを抱けってこと？」
『ははっ、そんなこと言ってないじゃん。
アイツを慰めてほしいってことよ、』
「つまりそういうことでしょ」
まあ、私にとっては都合悪くもないけど。
だから立ち上がって、康二さんの隣に座った。
「隣、大丈夫ですか？」
『んぁ....、どうぞ』
初めてちゃんと見た康二さんのお顔。
想像してた10倍はかっこよかった。
特徴的な鷲鼻に、薄いけど色っぽい唇。
正直、とてもタイプだった。
認めたくないけど、一目惚れかな、これ。
声掛ける前より、断然ドキドキしてるし、
もっと康二さんのこと知りたいかも、
そう思った私って、相当単純で自分でも腹立たしいくらい。
「あの、振られたんですか？」
ド直球に聞いてみた。
だから、生憎コミュ力は持ち合わせてないんだよ。
『んー、...振られたってわけじゃないねん、
失恋した』
「...別れた、とか？」
『いや、...ずっと好きやった人が違う人と付き合ったんよ』
そっちね、
振られたとかじゃないんだ。
「そうなんですね...。
結構いい感じだったんですか？その女性とは」
『......うーん、波長は合うなぁって、思ってた。
向こうにとっては、俺じゃなかったんやなぁ。ずっと一緒につるんでた別の同期と付き合ったんよ』
「身近な感じ...なんですね」
『うん、そう、つらい』
そう言った康二さんは、手元のウィスキーをグイッと飲み干してこっちを見た。
『綺麗な目してるな、
今夜、どう？』
貴方こそ、目が変わったみたい。
さっきまでの弱さは急に消えて、
男になった康二さんに、さらにギャップを感じて、私は首を縦に振った。
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作者名：あやの | 作成日時：2021年7月7日 9時
