ただの都合の良い女だから《橙》 (ページ26)

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ペアのものがほしいって言っただけなのに、手作りで思い出にできるようにって康二くんが予約してくれた。

『いらっしゃいませ、

　お名前をお伺いしてもよろしいですか？』

『向井です』

『はい、向井様ですね。

　本日担当させていただく○○です。
　ではこちらのテーブルにおかけください』

「はい、」

ここでは1人の店員さんが付き添いでリングを作るみたい。

リングは装飾とかデザインも選べて、

私たちはノリノリでリングのデザインを決めた。

「やば、店内もめっちゃお洒落だね」

『うん、なんか男が来るには場違い感あるわ』

『当店はカップルでご来店される方も多いですよ』

「へぇ、そうなんですね」

『なんか、カップルって言われるの嬉しいな』

満面の笑みでそう言う康二くんが可愛くてたまらなかった。

店員さんに言われるがまま、私たちはお互いのリングを作り合う。

ただの金属片が、気付けば個性的なリングになっていった。

『すごいなぁ』

「ね、こんな風に作れるんだね」

『ほら、見て見て！俺が作ったやつ上手くない？』

「ほんとじゃん、ここ綺麗！」

『やろ？俺こういうの得意やねん。

　あ、Aちゃんのは？見せて見せて〜』

「はい、」

『あー......俺の方が綺麗やわ』

「な、失礼しちゃう！ほんとに！

　どう見ても私の方が綺麗でしょ！
　ここの面なんて見て？康二くんのはこんなだけど、私のは、ほら綺麗じゃん」

『んー、...確かにこの面見たらそうかもしれん』

しゅんっと、下がった尻尾が見えるんじゃないかってくらいしょんぼりする康二くん。

子犬康二久しぶりに見たなー、なんて思った。

最近は塚原さんの話題なんてもちろんしないし、私といる間は思い出すことがないのか、思い出そうとしないのか、

びっくりするくらい元気な康二くん。

「そんなしょんぼりしてる康二くん、久しぶり」

『え？』

「いや、なんだか、バーで会った時はずっとそんな感じだったなぁって」

『あー......俺、こんなんやった？』

「うん、やばかったよ負のオーラ」

『恥ずかし！ちょっとその過去消したいわ！』

「ふふ、今の幸せそうな康二くんの方がいいね」

そう言うと、ニコッと笑って、"そうやろ？！"って言ってくる。

全く可愛くて素直なんだから、うちの子犬康二くんは。

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