ただの都合の良い女だから《橙》 (ページ21)

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立てかけられた同僚との写真にモヤモヤするなんて、自分でも嫌気がさしちゃう。

それに私って、康二くんのただの都合のいい女で、すなわち恋人未満なわけで図々しいのは重々承知してる。

だけど気になって、ぼーっとその写真を眺めてたときだった。

『何みてるん?』

「あ...いや、えっと」

『その写真、ええやろ』

「そ、そうだね」

なんだか心がズキンと痛む。

私がどんな思いでこの写真を眺めてるかなんて、気付いていないんだろうな。

『それが、塚原さん、俺が失恋した人』

「あっ、そうなんだ」

うん、そんなのわかってるよ。気付いてる。

『ほんま、俺も未練タラタラやな〜』

「そうだね」

『早く気持ちに区切りつけなあかんって思ってるし、Aちゃんに甘えて、....Aちゃんを縛ってる気がして』

「うん」

『これ目黒っていうんやけど、目黒と塚原さんがすぐに別れてくれへんかなって、男気もなくクソみたいな考え持ってたときもあったけど、

　二人は幸せそうやし、結構適齢期も近づいてきて....あー、俺なんか、敵わんなって......』

「......」

『はよ、諦めなあかんな、』

いつものように覇気のない声でこんなことを言う康二くん。

切なさも虚しさも、自分への嫌悪感も感じられるし、話を聞いて共感さえしてしまいそう。

今、私は好きな人の"好きな人"の話を聞いて、自分だって悲しいはずなのに、また康二くんを擁護することばっか考えて

でも康二くんの気持ちを考えても、塚原さんを諦めるべきか、追い続けるべきか、どちらの決断も苦しすぎて、私は声をかけられなかった。

代わりに、いつもみたいに抱き締めた。

『Aちゃんは、いつも俺を助けてくれるな』

涙声が部屋に響く。

「...私は、康二くんの味方だから、」

『Aちゃん...俺、塚原さんのこと諦めるわ』

「え、いいの...？」

『うん...

　俺、今から最低な話するな、』

彼は重そうな口振りだった。

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