ただの都合の良い女だから《橙》 (ページ2)

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何も考えずにただ呑んでるだけのこの時間。

刺激を求めてはいるけども、本当に低刺激なこの時間は私の休息として不可欠なもの。

他のお客さんやマスターの動きをぼーっと眺めて、時々聞き耳立てて、

みんな大変なんだなって、自分の生活捨てたもんじゃないって、半ば比較しながら軽く1時間ほど過ごす。

さっきマスターに項垂れてた康二さんは

ラスティネイルを飲んだ瞬間、耳まで顔を赤くしてて、

あー、あんま強くないんだな〜なんて俯瞰してたら、案の定ベロベロに酔ってた。

そのあとは隣にいた女性に口説いてて、

少し話した後、2人でバーを出てった。

まあこの後のことなんて追及しなくてもわかるでしょ。

そんな様子を見てて、なんだかモヤモヤした。

女の傷を女で癒すことが悪いことだとは思ってないし、

なんなら私もそういう男を好きになることが多かった。

あ、癒す側の女になりがちで、よくクズに引っかかるもの。

だから康二さんが悪いとは1mmも思わないんだけど、

隣の女性が羨ましかった。

なんだろう。

結局刺激を求めてるから、癒す側の女をやめられなくて、

あんな子犬みたいに背中丸めて泣いてる康二さんを見てたら、

私が癒してあげたい。

そんな感情が芽生えたから。

けど、まあ残念ながら彼は別の女性とバーを出たわけだし、特に何かが進展することもなく、私も口をつけてるバラライカを流し呑んでバーを出た。

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