虚飾 ページ31
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「集中途切れてきたね。ちょっと休憩しようか」
『...はい』
コレあげるといつ買ったのか、ペットボトルの水を放り投げられた。ヘロヘロになった体に一気に流し込めば、脱力して一気に壁を背に座り込む。汗が服にへばりついて気持ち悪い。コレが終わったら風呂直行だなと深く息を吐きながら考える。
俺を見下ろしてサングラスを軽く下げた五条先生は反対に汗一つかいていない。五条先生との特訓は大体こうなる。いつか汗の一つや二つかかせてみたいと五条先生を見上げる。
「というか任務終わらせた後なんでしょ、疲れてないの?」
『疲れてますけど…早く強くなんないといけないんで』
こんな将来の見えない仕事なんだ、早くしないと俺が先に野垂れ死んでしまう。特訓の反動でまだ震えてる手をグーパーと動かした。立ち上がって体を慣らすように軽くストレッチをする。
「...離れるとこうなるのか。どっちでも難儀だな」
『...?』
「いーやこっちの話」
変な五条先生に首を傾げて、自身に喝を入れるように背を思い切り反らす。グッグッと逆さまの視界で遠くの床を見つめて、あ、と声が漏れた。
ぺたぺた畳を裸足で歩いて、そこに置いてある物を手に取る。万が一特訓の最中に当たって壊れたりしたら目も当てられないと遠ざけていたのを忘れていた。
『五条先生、これ返します』
「ああ、僕が貸してた呪具。使わないの?皆の前では術式使いたくないって言ってたじゃん」
『...アレは、便宜上皆と言っただけで。正直、悠仁に見られなければなんでも良かったんです。だから...すんません』
ナイフというにはちょっとゴツイ呪具。相談をした時に、術式を使わないならとポイと渡されたのがソレだった。けれど、結局使ったのは軽く実践だと向かった三級の呪霊一回キリだ。悠仁と合同任務じゃなければ術式を使っていたし、初の合同任務はあの少年院だった。
結局特級呪霊に気圧されて動けなかった俺に呪具を使う出番はなく、最終的に悠仁から離れた為ソレは懐に仕舞われたままだった。もう使う理由もないので、こうして代わり映えしないソレを返したのだ。
「ハハッ、まあそんな気はしてたけどね。いいよいいよ、私情だらけの行動は若人の特権だからね!」
正直僕もそろそろ辞めさせようとしてたし、と平然と言う五条先生にそれは言わなくてもいいだろと内心突っ込んで、そのまま沈黙が場を制した。
ずっと心の底にある蟠り。五条先生はそれを見透かしているかのように微笑んでいた。
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てふ(プロフ) - しゃけさん» ありがとうございます。結構尖った作品なので不安でしたが、好きになって貰えてとても嬉しいです! (9月8日 3時) (レス) id: cfa7e5adb6 (このIDを非表示/違反報告)
しゃけ - こんなにドストライクな作品初めてみました。とても好きです。 (9月7日 23時) (レス) @page24 id: a0f7c3b137 (このIDを非表示/違反報告)
てふ(プロフ) - 柴イヌさん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。ご期待に添えれるよう頑張ります! (8月21日 12時) (レス) @page21 id: cfa7e5adb6 (このIDを非表示/違反報告)
柴イヌ - めっちゃ面白いです!続きが待ち遠しいです。作者様のペースで次回作待ってます! (8月21日 9時) (レス) @page21 id: a0f7c3b137 (このIDを非表示/違反報告)
ちと(プロフ) - へいさん» お返事遅れて申し訳ありません。大変嬉しいお言葉ありがとうございます! (2022年10月21日 1時) (レス) id: 20c14f813d (このIDを非表示/違反報告)
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作成日時:2022年8月31日 19時