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「…偏った気は程々にしないと愛想尽かされるぞ」
遠い眼差しをする尾崎に告げれば、
彼女は「その通り」と素直に頷く。
「この通り逃げられたからのう」
「逃げられるも何も捕まってすら居ないが」
間を空けずに云うと、尾崎は瞳に哀しさを含みながら優しく微笑んだ。
「御主は太宰を放って良いのかえ?」
「…嗚呼、今は此処に居るだけで事足りる。」
私の言葉通り、
私と尾崎がこうして探偵社に居る間に事の成り行きは淡々と進んでいた。
それは安吾と太宰が事故に合っただとか、
敦と鏡花が組合に襲われただとか、
Qの呪いが街全体に伝染しただとか諸々だ。
濃い一日だ…と、窓の外を眺めれば尾崎は呆れた様な乾いた笑みを私に向けた。
*
翌日
太宰の低く項垂れた声が響き、その場に居た国木田の眉が動く。
昨日の事もあってかバナナの皮を剥かずに齧る太宰を横目に私は先程尾崎に渡した手紙を思い出していた。
丁度その時、福沢が現れ場の雰囲気が張り詰める。
福沢が私と太宰に目配せをすると「マフィアとの密会の場を持つ件はどうだ」と訊いた。
「手は打ってますが、どうでしょうAさん」
「来ると思うよ!でもリンタロウなら殺しちゃうかも〜!」
熊の人形を兎の人形に覆い被せる様にして答えれば福沢は「そうか」と頷き、構成員同士で争うよりは良いと云って去っていった。
冗談の心算なのに連れない奴だ、と思いながら太宰に寄りかかれば一部始終を見ていた国木田の眼鏡がギラリと光った。
「…何故お前らが密会の手筈を整えている!?」
「元マフィアだから」
太宰が平然と答えれば国木田は私と太宰を交互に見ながら固まる。
その様子を「面白い〜!」と嗤うと国木田は幼児が裏社会に入れる時代…と口をパクパクさせた。
「国木田、鯉みたい〜!」
くすくすと愉快に笑う。
きっと今頃尾崎が森に手紙を渡してる頃だろうと笑みを浮かべた。
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「探偵社から茶会の誘いだそうじゃ」
尾崎から手紙を渡された森は一瞬目を見開いたが、
直ぐに何時もの表情に戻り「成る程、そう来たか」と呟く。
森は記憶の隅にあった8年前を思い出していた。
先代のポートマフィア首領にメスを入れた時、
その場には森と太宰、そしてAがいた。
深妙な面持ちをする太宰とは裏腹にAだけは面白そうに口を歪める。
「…茶会に行こう。」
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ぽん酢(プロフ) - 凄い面白かったです!更新待ってます!! (2018年8月15日 22時) (レス) id: 294c8f425c (このIDを非表示/違反報告)
きらり(プロフ) - 最高です!続きがめちゃ気になります!頑張って下さい!応援しています! (2018年8月13日 13時) (レス) id: b31c3f6b99 (このIDを非表示/違反報告)
亜純(プロフ) - 最ッ高です! 更新頑張ってください!! (2018年8月13日 0時) (レス) id: 430739def7 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ(プロフ) - 題名って「この素晴らしい世界に祝福を!」これ参考にしてます? (2018年8月12日 22時) (レス) id: 866317dc4d (このIDを非表示/違反報告)
らつ - 初めて読みました!!最高です!更新楽しみにしてます! (2018年8月9日 18時) (レス) id: 84c9675812 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななな | 作成日時:2018年7月20日 22時