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入学式から数ヶ月後。

日本で行われたイベントは昨日終わり、
連日ニュースはその話題ばかりだった。



今日は休日。
いつもよりゆっくり寝れた私は部屋の時計が8時過ぎなのを確認してベッドから降りた。

私は疲れていたのか一際大きな欠伸をしながらリビングのドアを開けた。




「おう、おはよう」

「……へ、」



普段掛かることの無い声に私の口からは間抜けな声が漏れる。

それもそのはず目線の先にはリビングのソファに座ってテレビを見ながらコーヒーを飲むお父さんが居て私は思わず数歩引き下がった。

私の記憶では休日の日中にお父さんがいる事は極めて少なく、居ても寝室で疲れを癒すために寝ていることが多い。
こうして起きているお父さんは私にとって新鮮過ぎた。



「朝飯、レンジの中入ってるから食えよ」

「へ、お父さんが作ってくれたの?」



平然な態度のお父さんに戸惑いながらも問えば簡潔に「おう」と返ってきた。

そういえばお母さんが「お父さんは料理が上手い」と言う話を随分前に聞いたことがある。
私の中では都市伝説と化していたその話は今立証された。



「わ…フレンチトーストだ。」



レンジを覗けばお皿に綺麗に盛り付けされたフレンチトーストがあった。

何を隠そう私の好物のうち一つはフレンチトーストなので純粋に嬉しかった。

棚からフォークを出して白いダイニングテーブルで食べるとお母さんのと同じくらい美味しくて思わず目を見開いた。



「……美味しい、」

「そうか。」


堪らず溢れた言葉にお父さんらしいぶっきらぼうな声が返ってくる。
自然と頰が緩む中、私はフレンチトーストを見つめてぼんやりと考えた。

きっとこの朝食が好物じゃなくても私は美味しい、そして嬉しいと感じたと思う。
それは"味"ではなくてきっと"お父さんが作ってくれた"という事に関しての感情だろう。


経験した事の無いポカポカとした感情はとても心地良くて私はずっとこの時間が続けばいいのにと思った。


…お父さんもそう思ってくれていたら嬉しい。





テレビの方を向くお父さんの後ろ姿を見つめて私はまた頰が緩んだ。

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とた - 爆豪君がめちゃくちゃ理想のパパで、読む度にしんどいです‎߹𖥦߹ 大好きです……!!更新お待ちしています!! (2021年10月26日 23時) (レス) @page19 id: c64444001a (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ - すごく面白いです。更新待っています (2021年5月30日 12時) (レス) id: bd6a8b3525 (このIDを非表示/違反報告)
とあ(プロフ) - かっちゃんパパめちゃ好きです!更新楽しみにしてます〜 (2018年6月6日 21時) (レス) id: b37c094aac (このIDを非表示/違反報告)
milk - かっちゃんのお父さん姿が理想過ぎて殺られました...(/_;)/~~大好きです!!!更新楽しみにしてます!!! (2018年5月31日 18時) (レス) id: 2e49390f17 (このIDを非表示/違反報告)
花帆 - 読む度にかっちゃんの父親感に感動して泣きそうです… (2018年5月29日 0時) (レス) id: aa0adc990d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ななな | 作成日時:2018年5月25日 18時

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