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携帯恋話【 ? × in 】 ページ1

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遠距離恋愛になったって俺たちは大丈夫。


なんて、マンガやドラマの見過ぎだったのかもしれない。



そんなものは物語の中だけの話で、離れてしまったら、隣にいない不安、それを埋めてくれる温もりも感触も足りなくて、
どうにか縋りつきたくて、スマホを耳に当て声だけでもと求めてしまう。


だけどいつからか、とりとめもない話の後に囁かれる愛の言葉は決まったものばかりになって、機械的に聞こえるようになっていた。


それがどんどん俺の不安を加速させて、この感情を手放さないでいるのは自分だけなのではという感覚に襲われる。



受話器越しに、俺の不安が伝わってくれればいいのに。そうしたらきっとそんなことないよって笑ってこの不安を取り除いてくれるかもしれない、なんてまた夢みがちなことを考えてしまう。




最初の頃は毎日繋いでいた時間も、いまではほとんどなくなってしまって、一人の生活にも慣れてきてしまっていた。


心のどこかではもう気づいていた。


もう、繋がっていないんだろうということに。


けれどそれに気づかないふりをして、俺の名前を呼ぶ彼の声を必死に手繰り寄せていた。



いっそ、嫌いだと突き放してくれたら。繋ぎたくなくなるぐらい酷い言葉でこの感情を壊してくれたら。

そう思うのに、いつもくれるのは砂糖のように甘い言葉。

それがひどく胸を締め付け狂おしいほど苦しく感じてしまう程の距離を感じたのも、受話器越し。


今日もまた囁かれる甘い言葉に「もういいよ」と言えたら楽になるだろうか。言えるはずもないのに考えてしまう。

だってきっと、その時が来てしまった時に出てくるのは、「いかないで」って貴方を困らせる言葉なんだから。



『慧、愛してる』



ほら、また。結局そうなの。


今日もまた、貴方からの着信を待って、受話器越しにでもと繋がりを求めて、名残惜しむように捨てられないで貴方に恋してる俺に、貴方は気づいているんだろうか。



俺の感情とは裏腹に、嫌に進んでいくだけの時計の針を恨めしく思いながら、貴方の甘さが残ることを求めて。




in「もしもし…」







Fin.

あとがき→


ラッキーカラー

あずきいろ


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作者名:紅藍 | 作成日時:2021年9月27日 1時

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