忘れさせてあげる(煉獄杏寿郎) (ページ12)

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エピローグページ12

「炭治郎！」

柱が奇跡の生還を果たした竈門炭治郎という少年を取り囲む。Aは、耳を削がれ、指も数本飛んで行ったが、命こそは無事だった。

「これで……鬼がいなくなった……」

口に出すとようやく現実味が出てきた。
良かったと安堵したと同時に、つーっと涙が頬を伝った。

「願わくば、貴方とこの場を迎えたかった……」

Aは、疲労困憊により、意識が飛んでしまった。

薄れいく記憶の中に残っているのは、初恋の煉獄杏寿郎だった。
彼を見つけると、思わず駆け寄ったA。その顔は、あどけなさの残る少女の笑みだった。

「煉獄さん！」

いつも通りに突っ返される。そう思っていても、駆け寄ってしまうのが恋心だ。
だが、Aの考えとは裏腹に、煉獄はニコリと微笑みかけ、小さな頭にそっと手を乗せた。

「よもや、よく生き残った！あっぱれだ！」
「……ｯ！、」

ずっと憧れていた人から労いの言葉を貰ったA。今ならようやく言える気がした。

「私、煉獄さんがどうしようもなく好きなんです！」
「俺はその気持ちに答えられない。すまん！」

夢の中でも、貴方とは結ばれない。そう悟った。
煉獄は、少し眉を下げて続けた。

「君は、これから美丈夫を見つけ、幸せになれ！」
「私、煉獄さん以外は嫌ですよぉ……」
「命令だ！」
「ｯ、」

パッと煉獄に目を向けた時には、意識が戻ってしまった。目を開いたAを見て、良かったと漏らした隠たち。
彼らの心からの喜びを見て、彼女は思った。

「私、やっぱり、忘れさせたい」