しょうたとりょうた ページ45
一つ、二つ。あの真っ白い部屋とは別で、埃が薄く被ったフローリングに、俺の涙がこぼれる。手の甲を口に押し当てて、嗚咽を無理に抑え込む。呼吸が苦しくなるけど、そうしないとやってらんなかった。
「うっ……っ、ちっく、しょ……っ。ちくしょう……」
悔しい、恥ずかしい。俺は男なのに。いつになったら解放されんのかな、「大人」ってやつになったら？でも、それっていつ？
ずずっ、と鼻をすすって。「あ〜」と掠れた声を上げながら、あそこにいきたいなってぼんやり思った。あそこだったら、俺は俺でいられるから。素直に声だして、作り笑いじゃなく口角を上げることが出来て、俺の言葉に絶対に頷いてくれる存在があって。
「りょうた……」
頭の中で確かな輪郭と一緒に、幼馴染の涼太の顔が浮かぶ。会いたくて、自分の格好なんて気にしてらんなくて、衝動的に足を踏み出した。ぱさり、と白い布が落ちる。
「りょう、た……」
今日は何を話そう。クラスのやつらの馬鹿話でいいかな、この前涼太の好きそうな歌手をテレビで見た話でいいかな、涼太の家にはテレビはあるけど滅多に点かないらしいから、きっと喜ぶ。
でも、その輪郭は急にぼやけた。筆で、絵の具をぐるりと掻き回したみたいに。あ、っと思ったときはフローリングの床が傾きながら、近づいてくる。ダンッっていう音と共に、踏み出した右足に力を込めて、近くにあった壁に手をついた。ぼやぁっとし続ける視界と、じんわり熱を帯びていく頭……やばい、眠い。
「なん、で、こんなとき、に……」
ねむい、ねむい、ねむくてヤバイ。涼太のとこいきたい、でも、きっとこの眠気に身を任せたら、きっと気持ちいい。一生懸命目を開けて、船をこいで抗おうとしたけど、駄目だ、駄目なもんは駄目だ。頭の中がもうスリープモードだもん。
くたあ、って身体が力を失くして、すごい音と一緒にフローリングに転がった。あ、絶対これ父さん来る、嫌だな、怖いな。でも床、冷たくてきもちい……。ねむい……。
うとうとと目を上下して、俺の意識はゆっくり落ちていった。
「りょ、た……」
会いたい。
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リムる(プロフ) - 千晴さん» ありがとうございます！何度も読めるなんて寧ろラッキーって感じです！いつも素敵なお話で何度も読み返してます。無理のない範囲で頑張って下さい！ (2020年8月9日 19時) (
レス) id: b5e023cd9b (このIDを非表示/違反報告)
千晴(プロフ) - リムるさん» リクエストありがとうございます！本編中にも似たようなお話が登場してしまうのですが、内容が多少被っていても大丈夫でしょうか、レパートリィ少ない作者ですみません！ (2020年8月5日 21時) (レス) id: 36259cee76 (このIDを非表示/違反報告)
千晴(プロフ) - 柿ちゃんさん» リクエストありがとうございます！無理しちゃう健気なskくんを一生懸命書かせていただきますので、少々お待ちください！ (2020年8月5日 21時) (レス) id: 36259cee76 (このIDを非表示/違反報告)
KUMA(プロフ) - 千晴さん» ありがとうございます！楽しみに待ってます！ (2020年8月5日 13時) (レス) id: 0b66efa19b (このIDを非表示/違反報告)
阿部月姫(ｶｸﾞﾔ)(プロフ) - 千晴さん» レスありがとうございます！ はい！大丈夫です！！ (2020年8月5日 13時) (レス) id: 2beffc3723 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千晴 | 作成日時：2020年7月24日 1時
