りょうたとお母さん ページ40
声が掠れる。だって滝沢先生は、今までそんなこと一度も聞いたことがなかったから。
「なんで、そんなこと、聞くの……？」
声が震える。てんかんの発作はでてないのに、握りしめた両手が震えた。肩を掴む滝沢先生の手の力も強くなった。
「……ごめんな、変なこと聞いたな……」
でもな、と滝沢先生はどこまでも辛そうに言った。
「お前が生きていく上で、必要な質問だと思うから……」
ずるい、ずるい、滝沢先生はずるい。そんな、俺よりも痛そうな顔をされたら、避けられなくなってしまう。
はっ、と吐き出す息は震えていた。握りしめた拳はもう限界で、今この瞬間を持って、ダラリと垂れ下がった。
「母さんは……」
「うん」
「普通の人じゃ、なかったんだね」
よく、「寂しい」って叫んで昼間に急に泣き出す人だった。たまに、俺を家から一歩も出さなかった。欲しいものは客に貢がせて、それだけじゃ飽き足らずあちらこちらで借金を作って……料理なんかする人じゃなかったから、今日のご飯は涼太の好きなの買って来たのよ、なんて言ってスーパーのお惣菜を平気で置いていく……家には、弁当の容器と、食べきれなかった揚げ物が重なっていった。ゴミの分別の仕方も、知らなかったから。
借金が返せなくて、仕事上、恨みを持つことも多かった母さんは……そのうち、俺にも「男」を連れてくるようにもなった。いつでも伸びる無数の手、いつでも泡立った肌、母さんによく似た顔を何度も強く恨んだ。
だけど、そのうち、なにも感じなくなっていた。だって、母さんがいつも「良かったね涼太、可愛がってもらってね」なんてあの完璧な笑顔で言うから。別の日には「お金、これでチャラにしてくれるんだって……母さんのこと、助けてね涼太」と、儚げな姿で微笑んでいたから。
「あぁこれは嬉しいことなんだ」と自分自身で暗示もかけた。その暗示は、今目の前にいる先生に解かれた訳だけど、それは暗く暗く、俺の心に垂れ下がったままだ。
……でも、それでも「涼太ごめんね」とか「いってきます、愛してるよ」って、頭を撫でてくれた温もりも……全部全部、覚えてる。
覚えている、のだけど。
「……滝沢先生、あのね」
「ん、なんだ」
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リムる(プロフ) - 千晴さん» ありがとうございます！何度も読めるなんて寧ろラッキーって感じです！いつも素敵なお話で何度も読み返してます。無理のない範囲で頑張って下さい！ (2020年8月9日 19時) (
レス) id: b5e023cd9b (このIDを非表示/違反報告)
千晴(プロフ) - リムるさん» リクエストありがとうございます！本編中にも似たようなお話が登場してしまうのですが、内容が多少被っていても大丈夫でしょうか、レパートリィ少ない作者ですみません！ (2020年8月5日 21時) (レス) id: 36259cee76 (このIDを非表示/違反報告)
千晴(プロフ) - 柿ちゃんさん» リクエストありがとうございます！無理しちゃう健気なskくんを一生懸命書かせていただきますので、少々お待ちください！ (2020年8月5日 21時) (レス) id: 36259cee76 (このIDを非表示/違反報告)
KUMA(プロフ) - 千晴さん» ありがとうございます！楽しみに待ってます！ (2020年8月5日 13時) (レス) id: 0b66efa19b (このIDを非表示/違反報告)
阿部月姫(ｶｸﾞﾔ)(プロフ) - 千晴さん» レスありがとうございます！ はい！大丈夫です！！ (2020年8月5日 13時) (レス) id: 2beffc3723 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千晴 | 作成日時：2020年7月24日 1時
