たつやとひかる ページ32
途切れ途切れな、大きな泣き声。「両親」を知らない辰哉の心臓も途端に苦しくなった。
智先生が三角座りの照を優しく胸の中に倒して、ゆっくりとなでる。大丈夫、大丈夫、と小さく優しく囁かれるその声は、智先生まで泣いてるみたいで。しがみつく手がもみじみたいに小さくて、赤く腫れる鼻が切なくて……首から、肩を中心に巻かれている白い包帯が、妙に目に刺さって、辰哉は櫻井先生に背を押されるまで、その場から動けなかった。
「……翔せんせ」
リビングから、部屋まで移動するとき、本音を櫻井先生にぶつけてみた。
「『親』って、みんな酷いのばっかりだよな」
「え？」
「……多分照も、そのうち分かるよ。朝焼け荘の方が、いいって」
そういった辰哉の頭を櫻井先生は、辛そうに撫でた。
今なら分かる。この時の照は、不安で不安でしょうがなくて、俺は「両親」を失くした照の気持ちを理解することが出来なくて、すれ違っていたんだ。だって、自分はずっと施設育ちで、親に見捨てられた子供を何人もみてきて……「違う子もいる」っていう実感が、沸かなかったから。
「おれ、もしかして嫌われてる？」
照が「朝焼け荘」にやってきて、丁度一週間。辰哉は照に、避けに避けられていた。正直、心が折れてしまいそうなほどに。
朝、おはよう、と声を掛ければ布団を頭から被ってしまい、辰哉が部屋を出るまで絶対顔を出さなかった。その日は初日だったのだが、それ以来同じ部屋で寝ていない。到着した、二段ベッドは照の寝床は空っぽのままだ。ご飯は一緒に食べるけど、なんかずっと見られてるような気がする……。たまに怖い怖いって泣いているから傍にいくけど、それでも「いやああ」と逃げていってしまうし、何より一言も口をきいてくれない。
「はあ……兄ちゃん『しっかく』かも……」
「おいおい、そんな言葉どこで覚えてきたんだよ……」
夕飯を食べた後、智先生と照がお風呂に入っている隙に、テレビの前でそう言うと、櫻井先生からやや呆れた声が返ってきた。
「それに、そんなことねーよ。照はなんていうか、まだ緊張してるだけだろ？」
「だって……智先生と翔先生たちはもう普通じゃん」
「それはまあ、大人だしなぁ」
「おれだって……仲良くしたいのに……」
「……その気持ちがあれば大丈夫だって」
ほら、アイスあるぞ、と目の前にぶどう味のアイスを差し出されて、辰哉は思いっきりかぶりついた。
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リムる(プロフ) - 千晴さん» ありがとうございます！何度も読めるなんて寧ろラッキーって感じです！いつも素敵なお話で何度も読み返してます。無理のない範囲で頑張って下さい！ (2020年8月9日 19時) (
レス) id: b5e023cd9b (このIDを非表示/違反報告)
千晴(プロフ) - リムるさん» リクエストありがとうございます！本編中にも似たようなお話が登場してしまうのですが、内容が多少被っていても大丈夫でしょうか、レパートリィ少ない作者ですみません！ (2020年8月5日 21時) (レス) id: 36259cee76 (このIDを非表示/違反報告)
千晴(プロフ) - 柿ちゃんさん» リクエストありがとうございます！無理しちゃう健気なskくんを一生懸命書かせていただきますので、少々お待ちください！ (2020年8月5日 21時) (レス) id: 36259cee76 (このIDを非表示/違反報告)
KUMA(プロフ) - 千晴さん» ありがとうございます！楽しみに待ってます！ (2020年8月5日 13時) (レス) id: 0b66efa19b (このIDを非表示/違反報告)
阿部月姫(ｶｸﾞﾔ)(プロフ) - 千晴さん» レスありがとうございます！ はい！大丈夫です！！ (2020年8月5日 13時) (レス) id: 2beffc3723 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千晴 | 作成日時：2020年7月24日 1時
