たつやとひかる ページ27
(side 深澤辰哉・五歳)
さっきまで、いい夢を見ていた気がする。ぼんやりと自分が覚醒していくことを感じながら、辰哉は目を覚ました。お気に入りのブランケットに包まれながら、少しだけ沸いてきた違和感に、寝たまま、ん？と首を傾げる。そしてようやく、「あ、そっか、引っ越したんだった」と理解が追い付いた。
記憶にはないけれど、自分はまだ赤ちゃんの頃に捨てられたらしい。包まれていたタオルケットを乳児院の先生に見せて貰った記憶があるけれど、ボロボロで薄汚れた、少し匂うタオルが出てきたときは、幼いながらに絶句した。両親のことは誰も分からないそうだ。辰哉は自分の身を守れもしない赤ん坊のうちに、身一つで転がされていたのだから。
乳児院を出た後は、その「捨てられていた場所」らしい児童養護施設にお世話になっていたけれど、一週間前に「自分たちのような子供」を専門に養育するために設立された「朝焼け荘」に引っ越してきた。
「よろしくな辰哉、辰哉が住む『スノードロップ』のリーダーの大野智って言うんだ。まだ色々慣れてないことが多いと思うけど、一緒に覚えていこうな」
引っ越してきた自分を出迎えたのは、ふわふわと周囲に綿毛が飛んでいそうな先生と、
「いやぁごめんごめん、今日ここにくる途中でまよちゃってさ……あ、よろしくな〜辰哉。櫻井翔先生って言います！」
しっかりしてそうで、どこか抜けている、なんか綺麗な顔している先生だった。
今、自分がいる最上階のフロアは辰哉一人しか所属していない。でも、玄関に入る前に設置されたスロープや、段差のない作り、それから目のつく場所全てにつけられら手すりのお陰で、「あぁ俺が来る為に作られた場所なんだな」と容易に想像がついた。
布団からなんとか上半身を起こして、んーっと背伸びする。相変わらず、ついてるんだかついてないんだかはっきりしていない左足は、今日もぼんやりとそこにいた。痛い、とか暑い、寒いは感じることが出来るけれど、本来の目的である「歩く」は実行できない左足。年中痺れていて、油が差されていないブリキ人形のよう、動くこともしないくせに雨が降る日には特別な痛み爆弾を投下してくるもんだから厄介だ。とはいえ、五年間、自分はこの足と生活してきた。不便は毎日感じているけれど、動かない奇妙な感覚も、たまにくる激痛も、使わないせいで不自然に細い足も、もう慣れっこだ。
その時、ノックの音とほぼ同時に、部屋のドアが開いた。
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リムる(プロフ) - 千晴さん» ありがとうございます！何度も読めるなんて寧ろラッキーって感じです！いつも素敵なお話で何度も読み返してます。無理のない範囲で頑張って下さい！ (2020年8月9日 19時) (
レス) id: b5e023cd9b (このIDを非表示/違反報告)
千晴(プロフ) - リムるさん» リクエストありがとうございます！本編中にも似たようなお話が登場してしまうのですが、内容が多少被っていても大丈夫でしょうか、レパートリィ少ない作者ですみません！ (2020年8月5日 21時) (レス) id: 36259cee76 (このIDを非表示/違反報告)
千晴(プロフ) - 柿ちゃんさん» リクエストありがとうございます！無理しちゃう健気なskくんを一生懸命書かせていただきますので、少々お待ちください！ (2020年8月5日 21時) (レス) id: 36259cee76 (このIDを非表示/違反報告)
KUMA(プロフ) - 千晴さん» ありがとうございます！楽しみに待ってます！ (2020年8月5日 13時) (レス) id: 0b66efa19b (このIDを非表示/違反報告)
阿部月姫(ｶｸﾞﾔ)(プロフ) - 千晴さん» レスありがとうございます！ はい！大丈夫です！！ (2020年8月5日 13時) (レス) id: 2beffc3723 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：千晴 | 作成日時：2020年7月24日 1時
